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PS2ソフト『デビルサマナー葛葉ライドウ対超力兵団』の考察記事、ゲームプレイ記録、コレクション写真など。

『シャイニングフォース・黒き竜の復活』の問題点・その2

『シャイニングフォース・黒き竜の復活』の問題点とは? その2

はじめに

※この記事は2023年11月1日に加筆・訂正・修正済み。

この記事は、セガより2004年に発売された、ゲームボーイアドバンスソフト『シャイニングフォース・黒き竜の復活』(以下『黒き竜』)の問題点を掘り下げていく連載企画の第二回目。このゲームは『シャイニングフォース・神々の遺産』(セガのメガドライブソフト。以下『神々の遺産』)のリメイク版である。

『黒き竜』の概要については、前回の記事を参照。

lucyukan.hatenablog.com

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今回のテーマは「主人公が喋る事の問題点」

今回は「『黒き竜』の主人公にセリフがあることの問題点」を取り上げようと思う。

まず、『神々の遺産』及び『黒き竜』の主人公について解説しよう。

主人公は、人間の剣士の青年である(デフォルト名は「マックス」で、変更可能だが、ここでは「主人公」とする)。ある日、「ガーディアナ」という国に流れ着いていたところを救われるが、記憶を無くしてしまっている(この失われた記憶には、重大な秘密が隠されている)。この国で平穏に暮らしていたが、ある時「ルーンファウスト」なる軍事大国の軍隊が、ガーディアナに攻め込んできたことをきっかけに、ルーンファウスト軍と戦うため、仲間たちと共に立ち上がることになる。

さて、『神々の遺産』での主人公は、ほとんど喋る事は無い(例外あり。これは後に述べる)。これは超有名なRPG『ドラゴンクエスト』(以下『ドラクエ』)を思わせる。

ところが、リメイクである『黒き竜』では、主人公は最初から喋りまくるのである(音声は無い)。これは、超有名なRPG『ファイナルファンタジー』(以下『FF』)のようである。

つまり、「『ドラクエ』をリメイクしたら、なぜか『FF』になってしまった」かのような違和感を覚えるのである(『黒き竜』しか知らない人には分からないだろうが…)。

しかしそれだけではなく、「主人公が喋ることによって、様々な問題が生じている」点にも注目してもらいたい。

次からは、その問題についていくつか取り上げてみよう(なおここから先は、ストーリーの重大なネタバレを含むのでご注意を)。

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主人公が喋ることの問題点その1・プレイヤーの想像力を妨げる

 まず、『黒き竜』では主人公が初めからよく喋るので、『神々の遺産』のように、プレイヤーの想像力で主人公のイメージを作ることができなくなってしまった。

さらに、例えば初期の話で、ケンタウロス族*1の騎士「アーサー」(とある町で「洗濯係」をしている男)と話すと、半ば強引に仲間に加わってしまうシーンでも、「何だあの人は…」というようなことを勝手に主人公が喋ってしまうので、プレイヤーが自ら突っ込みを入れるといった楽しみも無くなってしまっているのである。このようなシーンはたくさん出てくる。

『神々の遺産』のプレイヤーなら思わず「勝手に突っ込むんじゃないよ!」と言いたくもなるだろう。

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主人公が喋ることの問題点その2・「記憶を取り戻した」と自ら喋る

さて、『神々の遺産』及び『黒き竜』の主人公は、先ほど書いたように「記憶を全て無くしている」のであるが、話が進むとこの「失われた記憶」に関することが少しずつ明らかとなる。実は、彼は「世界を救う使命を帯びた兄弟の一人」であったことが判明するのだが…。

しかし、『神々の遺産』の場合、「主人公が記憶を取り戻したのか否か」は、はっきりとは示されていない(エンディングの後日談を見ると、記憶は戻ったのかも知れないと思わせるが、詳細は不明)。

ところが『黒き竜』では、後半になると主人公が自ら「記憶を取り戻した」旨の発言をする…(過去の回想シーンまで追加されている!)。もちろん、これは『神々の遺産』には存在しない展開である。

これについては、賛否あるかも知れないが、私は「否」派である。

やはり、「主人公が記憶を取り戻したのかどうか」は、プレイヤーの想像力にゆだねる方が正しいと思っている。

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主人公が喋ることの問題点その3・ラストシーンの感動が無い上、話の改変までされる

いちばん問題なのは、これである。

ゲーム終盤になると、主人公たちは最終エリアへ突入し、世界を破滅させるラスボス「ダークドラゴン」と対決することになる。これを倒すことができれば、ゲームクリアとなる。

ここで重要なのは、ダークドラゴンを撃破したあとの展開である。

 

『神々の遺産』では、ダークドラゴンを倒すと最終エリアは音を立てて崩壊し始め、主人公と仲間たちはピンチに陥る。だがここで、今まで喋ることの無かった主人公が突如「…リターン*2!」と喋り、仲間たちを外に脱出させて救うのだが、彼の姿は仲間たちの前から消えてしまうのだった…。このように、「いつもは喋らない主人公が最後だけ喋る」というのは、実は初代『ドラクエ』でもすでにやっていたりする。

 

では、主人公の喋る『黒き竜』では、どうなっているか。

まず『黒き竜』では、最終ボス戦より少し前に、「主人公は、あることがきっかけで声を失う」展開がある(もちろん、『神々の遺産』には無い話である!)。

そして、ダークドラゴン撃破後、突如「声を取り戻して」、「…リターン!」と唱える、という展開に変えられているのである。

しかし、これでは『神々の遺産』における、「普段喋らない主人公が、最後だけわずかに喋る」という衝撃が無くなってしまっているではないか。私はこのシーンで感動したのに…。先ほどの初代『ドラクエ』は、「リメイクされても基本的に主人公は喋らない」のは同じなのとは対照的すぎる。

このように、シナリオを強引に改変してまで、主人公が喋る設定にする必要は無いと、私は思っている。

なお『黒き竜』では、「主人公が声を失った後」は「リターン」が使えなくなっている点に注意。これもはっきり言うと改悪である。これ以降意図的に戦闘を離脱する場合、離脱できる地点まで行くか*3、「リターン」の代わりに「てんしのはね」*4か、「疾風のリング」*5を使うしかない。

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おわりに

今回は、「『黒き竜』の主人公にセリフがあることの問題点」を取り上げてみた。

まとめると、問題点はこういうところである。

  1. 「オリジナルは『ドラクエ』だったのに、リメイクしたら『FF』になった」ような違和感がある(『神々の遺産』と『黒き竜』の両方を知っていないとわからないだろうが。『ドラクエ』の場合はリメイクされても主人公が喋らないのは変わらないというのに…)。
  2. 主人公のイメージが固定されてしまう。プレイヤーが「突っ込みを入れる」という楽しさも無くなってしまった。
  3. 主人公が、「記憶を取り戻した」と喋るシーンが追加されている(回想シーンまで…)。これは蛇足だと思う。
  4. 『神々の遺産』では、ラストだけ喋る主人公という展開に衝撃を受けたのに、『黒き竜』ではそれが無くなった上、シナリオの一部改変までされてしまった。

というわけで、結論は「主人公は喋らないままの方が良かった」である。

では、次回はまた別の問題点を取り上げたいと思う。

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参照ゲームソフト

  • シャイニングフォース 神々の遺産(メガドライブ/発売元・セガ)
  • シャイニングフォース 黒き竜の復活(ゲームボーイアドバンス/発売元・セガ)
  • ドラゴンクエスト25周年記念 ファミコン&スーパーファミコン ドラゴンクエストI・II・III(Wii/発売元・スクウェア・エニックス)

参考文献

  • ドラゴンクエスト 30thアニバーサリー ドラゴンクエスト名言集 しんでしまうとはなにごとだ!(原著・堀井雄二/スクウェア・エニックス)
  • シャイニングフォース 黒き竜の復活 ファイナルコンプリートガイド(ファミ通責任編集/エンターブレイン)

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*1:半分人間で半分馬の種族。このゲームではよく出てくる

*2:これは、バトルマップを離脱するための魔法で、主人公しか使えないもの

*3:しかしマップによっては離脱地点が無かったりする

*4:「リターン」と同様の効果がある

*5:装備品だが使うと「リターン」の効果がある