ろーだいありー

ゲームレビュー・考察、本の紹介、自作イラスト、写真、映画評など。

シリーズ記事「『超國家機関ヤタガラス』はなぜ怖ろしいのか?」・第五回目

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(※画像はイメージです)

シリーズ 「超國家機関ヤタガラス」はなぜ怖ろしいのか?

・第五回目「『第七話・呪われた探偵』というシナリオの怖ろしさを検証する(其の四)」

はじめに

 このシリーズ記事は、デビルサマナー葛葉ライドウ対超力兵団(以下『超力兵団』。「プレイステーション2」専用ゲームソフトとして2006年に「アトラス」社より発売されたもの。現在は絶版)に登場する、「超國家機関ヤタガラス」(以下「ヤタガラス」)という架空の組織を「徹底的に批判するため」と、「このゲームシリーズはもう封印作品とすべきである」、そして特に『超力兵団』についてはどんな形であれ(ゲームソフトに限らず)、二度と世に出すべきではないということを訴えるために書くものである。

なぜ、このようなことを訴えるのか、ということについては、前回までの記事を参照されたい。本記事にも、その答えの一部は示している。

なおこの記事には、ゲームの「ネタバレ」も多く含むので注意。

また、このゲームをプレイされたことが無い方には理解できないであろうことは、お断りしておく。

私のTwitter(現在は諸事情により非公開アカウントとしている)での発言も、再録している部分がある。

もうひとつお断りしておくが、本記事と前回までの記事で、この『超力兵団』の「設定・世界観・キャラクター描写・ストーリー」などに関する事柄はすべて、PS2のゲーム『超力兵団』及び、続編の『デビルサマナー葛葉ライドウ対アバドン王』(こちらもPS2専用ゲームソフト。2008年発売。現在は絶版)と、この二作の説明書・各種公式攻略本や、『超力兵団』の公式設定資料本のみを参考にして書いた。それ故、この二作を題材とした「メーカー公認のコミック・ノベライズ・ドラマCD」といったものは一切参照していない(私はこの類の商品は一切購入せず、閲覧・視聴もしないため)。予めご了承あれ。

ゲームの概要・あらすじ・ヤタガラスについて・第七話について

詳しくは前回までの記事を参照のこと。

↓リンク先・第一回目

シリーズ記事「『超國家機関ヤタガラス』はなぜ怖ろしいのか?」・第一回目 - ろーだいありー

 ↓リンク先・第二回目

シリーズ記事「『超國家機関ヤタガラス』はなぜ怖ろしいのか?」・第二回目 - ろーだいありー

↓リンク先・第三回目

シリーズ記事「『超國家機関ヤタガラス』はなぜ怖ろしいのか?」・第三回目 - ろーだいありー

↓リンク先・第四回目

シリーズ記事「『超國家機関ヤタガラス』はなぜ怖ろしいのか?」・第四回目 - ろーだいありー 

今回のテーマは「前回の補足」と「第七話の総括」、「第七話に対する思い」

さて、第二回目~第四回目までは、「第七話・呪われた探偵」というシナリオの怖ろしさを、「ヤタガラスの使者のセリフ」「川野定吉という軍人のセリフ」などを元に検証してきた。

今回は、この第七話を総括し、さらにプレイ中に思ったことも書き綴ろうと思う。

その前に、前回の記事についていくつか補足があるので、先に書いておこう。

前回記事の補足・その1「撃破後のヒトコトヌシのセリフ」

第七話では、ボスである「ヒトコトヌシ」を倒せばシナリオクリアとなるのだが、倒した直後のヒトコトヌシのセリフにも注目してみよう。曰く…。

「烏に飼われた狐如きが!」。

狐というのは、主人公・葛葉ライドウの「葛葉」に由来する。「陰陽師安倍晴明にまつわる伝説」で、「晴明の母は『葛の葉』という雌狐である」というものがあり(無論それは作り話に過ぎないが)、ここから「葛葉」という姓を取り入れたのだろう(初代の『真・女神転生デビルサマナー』の主人公は「葛葉キョウジ」である)。

烏というのは当然「ヤタガラス」のことを指している。

つまり、ヒトコトヌシが言いたいのは「ライドウはヤタガラス(天皇を崇拝して守護し、日本国家を裏で支配する極右の権力団体)の飼い犬だ!」(要するに「国家の犬!」)ということだろう。

これは、まさにその通りだとしか言えない。なぜ、このゲームは「権力に従う側を主人公として、権力に反逆する方を敵にする」のだろう。「権力に歯向かう主人公の方がカッコいい」という時代は、もはや終わってしまったのか。

前回記事の補足・その2「天皇に呪いをかけた真の黒幕とは?」

第三回目と第四回目では、第七話で大正天皇(このゲームでは「閣下」、「海軍の大将」、「日本国にとって重要な御方」と呼ばれる)を呪ったのはヒトコトヌシ」と書いたが、ヒトコトヌシに「天皇に呪いをかけろ」と命じたのは別の人物である。

それは、「宗像」である。

宗像とは、第伍話(第五話)で一度会っている人物で、陸軍の偉い軍人だが、帝都破壊計画を企てている。

第七話より先の第拾話(第十話)では、宗像は実はスクナヒコナという、ヤタガラスと敵対する神に、肉体も精神も乗っ取られていたことが判明する(なお、第伍話と第拾話に関しては、また別の機会に詳しく取り上げたい)。

元々宗像は、愛国心のある「立派な軍人」と評される人物だったが、このスクナヒコナに乗っ取られてしまってから、豹変したのだ。ちなみに宗像という名の由来は、実在する神社「宗像大社」だろうか。

しかし、ひとつ奇妙な点がある。前回紹介したが、「実在した大正天皇の守護神は『オオクニヌシ大国主命)』である」ことになっている(原武史著『大正天皇朝日文庫46~49ページより)。

そしてスクナヒコナ少彦名。スクナビコナともいう)は、『古事記』によれば、どこかから現れて、オオクニヌシとともに「国を造った」のち、「常世の国」へと去っていった神様であるという。

そうすると、スクナヒコナオオクニヌシは友達である。それなのに、オオクニヌシが守護している大正天皇を、オオクニヌシと仲の良かったスクナヒコナが呪い殺そうとする」のはおかしいのではないか?

前回書いたが、この「大正天皇の守護神」については、製作者も知らなかった可能性はあるが…。 

前回記事の補足・その3「川野のセリフの続き」

前回、第七話で川野定吉(ライドウの味方をしている海軍軍人)が言うセリフを紹介したが、そのうちのひとつに「閣下が無事で何よりのことだ」というのがある(先ほども書いたが「閣下」とは天皇のこと)。

このセリフにはさらに続きがある。前回は紹介できなかったので、ここで書いておこう。

「自分からも改めて礼を言うよ。ありがとう」。

しかし、これも「お前のような、天皇と国体しか考えていない奴にはお礼など言われたくないわ! 何がありがとうだ!」と思うプレイヤーも居ることだろう。

前回も書いたように、これは天皇や軍のお偉方が「御国(天皇)のために戦死してくれてありがとう」と、死んだ兵士に言うようなものである。

前回記事の補足・その4「第八話で見られる新聞記事と、ある軍人のセリフ」

第二回目~第四回目と今回は、基本的に第七話について取り上げているのだが、この第七話の次のシナリオ「第八話・鉄塔の悪魔」で見られるセリフなどにも注目してみよう。

この第八話にもいろいろ興味深い点があり、これに関してはまた別の機会に取り上げるとして、ここでは第八話で銀座町(モデルは銀座)近くにある「ミルクホール新世界」に行くと読める「新聞記事」と、ある場所に居る「ノンプレイヤーキャラクター(町人)の海軍軍人」に話しかけると見られるセリフを紹介する。

余談だが、この第八話では町人のセリフに、かなり露骨で嫌らしいものが多いので、不快な方はあまり話しかけないことをお勧めする。

まず、第八話で新聞記事を見ると、このような記事を読むことができる。

「(前略)これからの海軍を率いるべき海軍大将が不思議な病に倒れ、回復の見込みが無いというのである。しかしつい先日、海軍省から閣下の病は峠を越え回復中であると発表された。わが社が入手した情報で、その病の回復に奔走した人物がいるという噂があったが、その真偽の程は確認できていない」

(※注・先ほども書いたように、ここで言う「海軍大将」及び「閣下」は大正天皇のこと。このゲーム上では史実とは異なり「天皇は海軍のみの大元帥」となっている。その理由は前回と前々回の記事を参照)

つまり、「ライドウが天皇を救うために奔走したが、そのことは一般人は知らない」ということ。

これを見て、「ライドウの密かな活躍によって、天皇が救われて本当に良かった」と思わせようとしたのだろうか。しかし、良かったなどと決して思わない人も居るはずである。

そして、ある場所に居る海軍軍人に話しかけた時のセリフも見てみよう。

「身を呈して我らが大将を護るとは…。誰にでもできることじゃないよ。ありがとう、敬意を評すよ。君は大日本帝国の誇りだ」。

(※注・このセリフには誤字がある。「身を呈する」は「身を挺する」、「敬意を評すよ」は「敬意を表すよ」の方が正しい。ここでは原文のままとした)

最後の「君は大日本帝国の誇りだ」というセリフ…、そう、これこそが第七話を入れた目的だと思う。大日本帝国の誇りだ」と言われて喜ぶ人向けに作ってるんだな…、ということが分かるのである(これに関しては、この先でも解説する)。

さらに追記。このゲームでは「各話(最終話以外)のあらすじを読む」機能があるのだが(シナリオクリアごとに追加される)、第八話に入ってから第七話のあらすじを見てみると、ここでも天皇のことは「某海軍閣下様」と書かれているのが分かる。このゲームの本編では、決して「天皇」という言葉は使われていないのである。

ただし、「デビルカルテ」(一度仲魔にした悪魔のデータや解説文を見たり、お金を払って再び召喚できる機能)で、ある悪魔の解説文を見ると、神武天皇」、「天皇家という単語が使われている…。ちなみに「アマテラス」という名前も、本編では出てこないのに、デビルカルテの解説文にだけは出てくる。

本編では「天皇」という単語は使われていないのに、本編と関係ないところだけ「天皇」が使われているというのは、何とも奇妙なことだ…(「アマテラス」もそう)。「菊タブー」を怖れているのか、いないのか分からない(「某海軍大将」を「天皇」と呼ぶのはマズイが、デビルカルテは本編と関わらないからいいってこと?)。

第七話についておさらい

では、本題に入ろう。

まず、この「第七話・呪われた探偵」のあらすじをおさらいしよう。より詳しく知りたいなら、前回までの記事を参照のこと。

 

「ヤタガラスの使者」(ヤタガラス配下の女性。ライドウの協力者)によると、「海軍の大将」であり「日本の未来にとって重要な御方」が、「敵(ヒトコトヌシ)の呪い」に苦しめられているという。

そこで、ライドウがその呪いを「身代わり」として引き受け、術者を倒しに行けと命じられる。

この命令には逆らう事ができない。逆らおうとすると「あなたに否という権利は無い」と言われ、川野定吉「君に選択の余地は無いよ」と言う…。

なお、この「重要な御方」とは、何度も言うが間違いなく「大正天皇」のことである(ここがもっとも大事な点)。

 

このシナリオは「ゲーム史上稀に見る大問題作である」と繰り返し述べているが、その理由については前回までの記事に詳しく書いた。

そして今回は、それを踏まえて第七話を総括しよう。

第七話を総括する

この第七話の問題は、第三回目と第四回目で指摘したように、天皇を命がけで護れ、逆らうな」というのは「教育勅語」と「国家神道」の思想であり、怖ろしいものだということ(このような思想が戦争へと繋がるのだ)。

それから、この命令に逆らえないのは天皇嫌いの人には配慮していない。ある種の思想差別」であること。

 

この『超力兵団』のような、「戦前の大日本帝国を舞台としたゲーム」で、「身を挺して天皇を守護するのは大変素晴らしいことであり、日本を護ることでもあります。主人公は日本の誇りです」といった話を入れるのは、ある意味では自然なことかも知れない。

だが、その場合は予め「このゲームは天皇と皇室を敬愛し、大日本帝国時代の日本が好きで、愛国心溢れる日本人の方々にだけプレイして欲しくて作りました」と、はっきりとパッケージにでも明記しないといけないだろう。

さらに『メガテン女神転生)』ではなく、オリジナル作品で、「このゲームでは、皇祖神アマテラスや、神武天皇は実在しないことを前提としております。『天皇は神の子孫』というのも、伝説ですとしておけばなお良いだろう。

こうすれば、天皇嫌い・天皇制は廃止しよう・大日本帝国嫌い・愛国心など持たぬ」と主張する人たちは絶対にプレイしないだろうから(例えプレイしなくても「このようなゲームがあること自体けしからん!」と怒る人も居るだろうけどね…)、特に問題はないと思う。

だが、この『超力兵団』は、まず『メガテン』である、という時点で大問題なのだ。

この記事を読まれる方はきっとメガテニストメガテンファン)であろうから、詳しく説明するのは野暮だと思うのだが、メガテンとはそもそも、「神様も悪魔も妖怪も実在する」という世界観を持つゲームである。つまり、架空の存在である「皇祖神・アマテラス(天照大神天津神とされる)」や、「神武天皇(初代天皇と言われる)」すらも、「実在している」ことになってしまう。そうすると、天皇天津神アマテラスの子孫なのです。皇族は神の末裔です」という作り話ですら、真実めいて見えてくる…。

このゲーム上では別に「アマテラスも神武天皇も実在するのです。天皇は神の子孫です」とははっきりと明かしてはいない(今作では「アマテラス」は仲魔としても敵としても登場していないし…)。

しかし、このゲームのシナリオ全般(ゲーム上の日本では天津神国津神の戦い」が本当にあったことになっており、それがシナリオのベースとなる)や、1931年という時代であること、舞台が大日本帝国であること、ヤタガラスの思想などを詳しく検証すると、恐らくそういうことになっているのだろう。

このような世界観では、右翼の人がよく言う「神の子孫たる天皇は日本の中心であり、尊い天皇家(皇室)が滅びれば日本も滅びる! だから絶対に天皇家を絶やしてはいけない!」という、単なる作り話でさえも、「もしかしたら本当かも知れない」と思わせてしまう。

その上で、天皇を命がけでお救いせよ、決して逆らうな」というシナリオを入れてしまうのは、非常に危険である。

 

なぜ危険かというのは、いくつかの理由があるので、一つずつ解説していこう。

その1・子どもたちには危険

私が懸念するのは、このゲームをプレイした子どもたち(ゲームの対象年齢から考えて、多くは十五歳以上だろうが、それ以下でも購入とプレイは可能)に対する悪影響である。

まず、子どもは「まだゲーム(フィクション)と現実の区別がつきにくい」のである(年齢が低いほどそうだ)。その子どもたちがこのゲームをプレイして、「『天皇尊い天皇家が無くなれば日本も滅びる』というのは、神話の中の話だけだと思ってたけど、本当だったんだ」と思ってしまう可能性はある。

そういえば、最近の(というより、2002年度からあるが)中学生用歴史教科書の中には、戦前・戦中の歴史教科書のように、「日本神話(『古事記』)での出来事」を「歴史上本当にあった出来事」のように書いているものも一部にあると聞く。歴史教科書すら、虚構と現実をごちゃ混ぜにしているとは…(そもそも、虚構に過ぎない「神話」を、歴史教科書に載せるべきではないと思う)。なお、歴史教科書問題・歴史認識問題については、このゲームと関わりがあるかも知れないと睨んでいるので、いずれ詳しく取り上げるつもりだ。

さらに、子どもたちはこの第七話を見て天皇をお助けするのは素晴らしいことなんだ」と思うようになるかも、と懸念する。つまり「若者を右傾化させる危険性があるのでは」ということ。

しかし逆に、右翼の人は「このゲームは子どもの愛国心天皇を敬う気持ちを養うから、良い!」と言い出しそうである。そこも心配だ…。

その2・右翼思想を持つ人だけが気持ちよくなればいい、というのは問題だ

この第七話は、愛国者・右翼系の思想を持ってる人・天皇好きの人に気持ちよくなってもらおう」というコンセプトで作られた話ではないか、と考えている。

つまり、いわゆる「右翼本・歴史修正(改竄)本(日本に都合良く歴史を捻じ曲げた本。「南京大虐殺は無かった」とか、「アジアは日本が戦ってくれて感謝している」と主張する本など)」を読んで「気持ちいい」と感じる人向けに作っているのだろう…、と思ってしまう。

これは、やはり「様々な思想のプレイヤーを持つ『メガテン』」でやっていい話ではない、と思う。

「右翼本と作りがそっくり」である時点で、「右翼本を読んで気持ち悪くなるプレイヤーは対象にしていない」ということだ。

しかし、天皇など護りたくない。ヤタガラスの支配する日本ならむしろ滅びればよい」と思うプレイヤーも確実に居ることを、全く考えていないのはおかしいだろう。さらに、日本のゲームが好きで日本語も分かる韓国人・中国人などの目に触れる可能性があることも、考えていない。

第三回目でも指摘したように、ヤタガラスに逆らえるようにすると「菊タブー」に触れるから、できなかったのだろうが。

なお「歴史修正(改竄)主義」に関しては、別の機会にまた触れるつもりである。

それと、もうひとつ思ったのだが、「右翼本と同じような作り」ということは、このゲームはひょっとすると、「『日本は悪だった』という歴史観(某グループの人が言うには「自虐史観」)を捨てて、日本人としての誇りを取り戻そう」が真のコンセプトだったのかも知れない。つまり、右翼本・歴史修正(改竄)本を書く人がよく言っていることと同じ…。

ちなみに、製作者によるとこのゲームのテーマは「パッション(情熱)」であるというけれど、それよりは「忠君愛国」がテーマとしか思えない。先ほど紹介した、第八話で聞ける海軍軍人のセリフ「君は大日本帝国の誇りだ」からも、それは伺えるであろう。

余談だが、このゲームでライドウと仲魔のステータス画面を開くと、バックに桜吹雪が舞うというイメージで表示されるのだが(それと、バックの花のイラストもだろうか)、というとどうしても軍国主義(日本の「軍歌」には、桜をモチーフとしたものがあるから)・国粋主義のイメージと重なってしまう。(それに、ライドウの武器が「日本刀」であるのも…。日本刀を好むのは右翼だとも言うし)。

さらに、『大正天皇』(原武史著/朝日文庫)の74ページによると、「桜がナショナルシンボル」となったのは、特に大正天皇との関係が深いとされる。そう考えると、やはりこのゲームはナショナリスト向け・天皇好き向け」に作ったのだろうね…、としか思えない。

その3・「右翼や右傾化した政府のプロパガンダ」に利用されかねない

この『超力兵団』は、そんなにメジャーなゲームではないので、それほど関係ないかもしれないが(メガテンは非常にマニアックなゲームシリーズだから)、このようなゲームは「戦争美化・愛国心高揚のためのプロパガンダに利用される怖れはあると考えている。

「ライドウは天皇と国家を護るために戦った! 大変素晴らしい! 諸君も彼を見習って、皇室と日本を護るために役立つ『愛国青少年』になろう!」と宣伝するような「右翼の人」も、もしかしたら現れるかも…、ということは考えなかったのだろうか。

実際、戦前や戦中は、子ども向きのマンガやアニメ映画、紙芝居なども、「国策」に利用されて、子どもたちを愛国少年少女」に育てるために使われたわけだから。今だったら、ゲームやテレビアニメなども国策に使われるだろう。

この『葛葉ライドウ』シリーズ(特に『超力兵団』について)は、もう封印すべきと言っているのは、今の時代にまたこのような作品を作ってしまうと、「右傾化した政府に利用されるかも…」という懸念があるから。

その4・『ドラクエ』なら問題ないが、このゲームでは問題になる

有名なロールプレイングゲームRPG)のシリーズでドラゴンクエスト(以下『ドラクエ』)がある。別に他のゲーム(『ファイナルファンタジー』など)でもいいけど、ここでは日本でもっとも有名な『ドラクエ』を例にする。

ドラクエ』の世界観は基本的に「ファンタジー」であり、様々な国家があり、お城があり、王様も居るだろう。

この「王様」は、日本では「天皇」ということになるだろう。でも日本人には「王様」と言われても、あまり身近には感じられないだろうが…。

では、もし『ドラクエ』の主人公(大抵は「勇者」)が、「王様が呪われて危機に陥ったので、どうか助けて欲しい! 呪いをかけた悪い魔法使いを倒して欲しい!」と、王様の側近に頼まれたとしたら、どうするだろう?

大抵の人は、「それなら助けましょう」と、気安く受け入れるだろう。

そして王様を無事に救い、王様の側近から「ありがとうございます、これで王様も国家も救われました! あなたは素晴らしい勇者様ですね!」と褒められれば、大抵の人は嬉しく思うだろう(さらにお礼のお金や品物を贈られれば、もっと嬉しい)。

 

…だが、これと同じような話を『超力兵団』でやるのは大問題である。

何故なら、これはドラクエ』ではなく『メガテン』であること、さらに舞台も「ファンタジー世界」ではなく大日本帝国であり、救うべき人が「大正天皇」(実在人物がモデル)であることを思い出して欲しい。

ドラクエ』であれば「ほぼ万人に素直に受け入れられるシナリオ」であっても、『超力兵団』でやってしまうと、とてもグロテスクなものに変貌するのである。何度も言うが、特に天皇・皇室というものに嫌悪感を感じる」人にとっては、到底受け入れがたいものだろう。

製作者は、「第七話をどうしても受け付けない思想の人もプレイするかも」、ということは考えなかった、としか思えないのだが。

その5・戦争賛美と捉えられかねない

そして、この第七話は、「戦争賛美の話だ」と捉える人も居るだろう。

何故かというと、大正天皇「軍の大元帥(ここでは海軍のみだが)」であり、これを救うということは「軍隊(皇軍)のリーダーであり、戦争を起こすかも知れない人物を温存させること」だからだ。史実では、大正天皇自身はアジア・太平洋戦争は引き起こさないが、その息子である昭和天皇は、アジア・太平洋戦争を引き起こした戦犯なのだから(裁きは受けなかったが、戦争責任は重大である)。

なお、このゲーム上で、このまま大正時代(このゲームでは大正時代が20年もある)が続くとしても(いつかは昭和になるのだろうが)、軍国主義の日本である限りは「アジア・太平洋戦争(戦中は「大東亜戦争」と呼ばれたが)」は確実に起こるだろう。それは最終話を見ると分かる(これに関しては別の機会に)。

このゲーム上の歴史では、もしかしたら大正天皇の時代にアジア・太平洋戦争が勃発するかも知れない」ということだ。そうなると、大正天皇が「アジア・太平洋戦争の戦犯」になるだろう。

もし、このゲームの将来がそうであれば、大正天皇を救うということは、未来の戦犯を救うこと」であり、全く「日本の平和のため」ではないということになろう。

いくら、ヤタガラスの思想では、「天皇を救うのは日本を護るためだ」となっていようが、現実は天皇天皇家を救えば、将来起こる戦争を止められない」ということ。

「このゲームの天皇は海軍のみの大元帥だから、アジア・太平洋戦争は起こさないのでは? 海軍には『アメリカとは戦争をしない方が良い』と思っていた軍人が多かったんだから」と言う人も居るかも知れないが、これは「海軍善玉論」を信じればそうなるだろう。しかし、実際は海軍の中にも戦争賛成論者は居たわけだし、「善玉論」は後付けに過ぎない(第三回目でも書いたが、このゲームは「海軍善玉論」に傾倒しすぎている)。そう考えれば、たとえ「天皇が海軍のみの大元帥」でも、将来「アジア・太平洋戦争」を起こすと思う。

もし戦争になって、海軍が動き出せば、陸軍も協力して参戦するのは間違いない。たとえ陸軍は、天皇の管轄化には置かれていなくても。それに(このゲーム上での)将来、天皇「陸軍」の方も支配するように変わる可能性はある。

ひとつ思うのだが、このゲームの天皇観(「ヤタガラス天皇観」でもある)というのは、天皇は常に国民とともに、平和の道を歩んでこられたのです。だから平和の象徴なのです」という、右派の人が好むものに近いように思う。しかし実際のところ、明治天皇大正天皇昭和天皇は戦争を指揮していたのだから、平和の象徴とは程遠いであろう(「常に国民とともに…」というのも怪しい)。

特に昭和天皇は、一般的には「軍部の暴走の犠牲者である」と言われるけど、それは捏造で、実際は戦争には積極的に関わっていたのだから。このゲームで昭和天皇を出さない理由も、お分かりだろう。

その6・もしこれがドイツのゲームだったとしたら?

その4では「もしもドラクエだったら」と書いたのだが、今度はこの『超力兵団』が「もしもドイツのゲームだったらどうだろう」と考えてみよう。

その場合、第七話はきっとこうなるだろう。

 

舞台は、戦前のドイツ。

主人公は、ナチス配下のデビルサマナーである。

ある時、ヒトラー閣下」(ナチスの総統)が重病にかかる。
実は、それはナチスを恨むユダヤ人(ナチスが差別・弾圧している人たち)」の呪いによるものだった。
主人公はヒトラー閣下を救え、逆らうのは許さん」と、ヒトラーの側近に命じられ、ユダヤ人の呪術者を倒しに行く。


…こう書くだけでも、何ともおぞましい話ではないか。ナチスヒトラー礼賛とユダヤ人差別…。
こんなゲームはドイツでは絶対に出せないだろう。作者は捕まり、ゲームは発禁処分になる(なお、ヒトラーナチスに関しては、アトラス社が1999年に出した「このゲームとも関係がある、某ゲーム作品」にも登場している。これについてもいつか取り上げたい)

しかし、日本では「天皇皇軍の大元帥)を救うために敵の呪術者(ヤタガラスにより差別・弾圧された神)を倒す」という話が認められてしまうのだから、怖ろしい。

これはやはり、日本の戦後教育の影響なのではないか。先ほども書いたが、多くの日本人は「昭和天皇は軍部の暴走の犠牲者だから、戦争責任は無い。あったとしても微罪」という程度の認識しか持たないから、天皇(ここでは大正天皇だが、昭和天皇の父であるのも事実)を救うという話も、問題なく受け入れてしまう」のだろうか。だが、頑として受け入れない人たちが存在することも、考慮すべきだ。

このゲームの「倫理」を審査した人も、この辺は見落としているのではないか(戦争のことをよく知らない人が審査しているとしか思えない)。少なくとも、審査員の中に天皇制廃止論者」と、「日本語が分かる中国人か韓国人」は一人も含まれていないのは、間違いないかも知れない。何故なら、もし含まれていたら、第七話を見た時天皇を護れという話は、日本の侵略戦争を美化するようなもので、天皇嫌いの人や近隣国の人の心情を無視している。削除して欲しい」と申し入れるのではないか、と感じるから。

第七話について思うこと

ここからは、第七話をプレイした時の個人的な思いを書いていこう。

最初に思ったことは、「製作者はプレイヤーに、『術者のヒトコトヌシへの怒りを抱かせて、天皇を救うという使命に燃えさせよう』としたのだな」、ということ(だからテーマが「パッション」なのか…? 私には「ファッショ」にしか見えないけど)。

しかし、私が感じたのは全く逆で、「ヤタガラスと、ヤタガラスの使者と、川野定吉に対する激しい怒り、不信感」しかなかった。そして「無理矢理命令に従わせようとすることの気持ち悪さ」もある。先ほども触れたように、これは「右派でない人が右翼本・歴史修正(改竄)本を読んだ時に感じる気持ち悪さ」に近いものだ。

また、天皇を護れという、ヤタガラスの命令に逆らえない」のは、赤紙召集令状)が来たら必ず『御国(天皇)のため』に、戦場へ行かなければならない」というのと同じである。そう考えると、さらにゾッとするだろう?

私自身は、別に「天皇制廃止論者」ではなく(廃止してもかまわないが、どうせ皇室ファンに阻まれるから無理だろう、という程度の認識)、皇室ファンでもない。ただし、「昭和天皇が戦争責任を取らなかったのは良くなかった」という考えは持っている。そして平和主義者である。

その程度の私ですら、この第七話は「吐き気がするほど嫌い」なのだから、天皇制や皇室に強い嫌悪感を抱く人たちが見たらどう思うだろうか…、と想像すると…。

「このゲームは、パッケージからして『大日本帝国好き』しか手に取らないから、別にいいだろう」と言う人も居るかも知れないが、確かにパッケージイラストを見ると軍国主義を匂わせる要素はある。だが、これを見ただけで「実は天皇を護れという話が入っている」とは分からないだろう。

やはり、パッケージには「暴力シーンやグロテスクな表現が含まれています」だけではなく、天皇崇拝要素が入っています」と明記した方が良かったと思う。

それにこのゲームは『メガテン』なので、天皇嫌いでも、大日本帝国に興味は無くても、メガテンだから買ってみよう」という人も居るわけだし(私はそのタイプだった)。

ゲーム冒頭では「このゲームはフィクションであり云々~」とは出てくるけど、これだけでは足りないと思う。天皇崇拝団体のヤタガラスが出てきますが、『天皇は神である』などと主張したいわけではありません。過去の日本や戦争を美化する意図で作ったものでもありません」といった注意書きも必要ではないか。特に子どもには必要だと思う。

それから、このシナリオで強く感じたのは「製作者のメッセージの押し付けがましさ」である(この第七話だけではないが。これについてはまた別の機会に)。

つまり、「日本人なら、天皇を護って日本(帝都)を救いたいと思うのは当然でしょ?」という、愛国心」の押し付けである。別に第七話では「愛国心」などというセリフが出てくるわけではないが、この第七話及びストーリー全般を見ると、愛国心を押し付けてくる」感じがするのだ。

だが、さっきも書いたように「ヤタガラスが支配する日本なんか滅びてよい」、「軍国主義大日本帝国なんてさっさと滅びろ(史実では実際に滅びているけど)」、「現実の今の日本に対する愛国心は持てない」、という人も、このゲームをプレイする可能性はあるだろう。日本在住の外国人(特に韓国人や中国人)だってプレイするかも知れない。

そのことを考慮しないで、第七話のようなシナリオを作るのは、何度も言うがとても危険である

だからこそ、私はこのゲームシリーズは封印すべきである、と主張する。

まとめ

では今回のまとめ。

  1. このゲームはメガテン(神も悪魔も実在することが前提のゲーム)だからこそ、第七話「呪われた探偵」のような、「神の子孫たる天皇家が滅ぶと日本も滅ぶ! だから天皇と皇室を必ず護れ!」という、右翼が好む作り話にそっくりなものを入れるのは非常に危険だ。
  2. 危険な理由の一つは、子どもたちが「神の子孫である天皇を護るのは素晴らしい、天皇家を絶やしてはいけないっていうのは本当だったんだ」と思うようになるかも知れないから
  3. さらに、この第七話は「右翼本・歴史修正(改竄)本の作り」にそっくりであり、この手の本を読んで気持ちよくなる人向けにしか作ってない、ということも問題だ。
  4. 右傾化した政府の「愛国プロパガンダに使われる可能性があるのも、危険だ。
  5. ドラクエ』であれば、「呪いにかかった王様を救え」という、特に問題のない話なのだが、『超力兵団』で同じような話を作るのは、非常に問題がある。何せ天皇を救え」だからだ。
  6. 「軍の大元帥である天皇を救う」、というシナリオは、戦争賛美の話である。
  7. もしこれがドイツのゲームなら、ヒトラーを救う」という話になってしまうだろう。こんな物はドイツでは発禁になるが、日本では天皇を救う」話でも平気で出せてしまうのが怖ろしい。
  8. 敵のヒトコトヌシよりも、ヤタガラスに怒りを燃やすプレイヤーも居る、ということは全く考えてなかったのだろうか。愛国心の押し付けも問題だ。
  9. 以上のように、この第七話(のみならず、このゲーム全般のシナリオや設定もそうだが)は、危険な要素を多く含むから、この『超力兵団』及び『葛葉ライドウ』シリーズはもう出すべきではない、と主張するのである。

おわりに

今回は、第七話について総括した。これで第七話についてはだいたい語り尽くしたと思う(もし何か新たに気づいたことがあれば、今後も取り上げるかも知れない)。

次回は、第七話以外のシナリオについて検証してみたい。第七話以外のシナリオにも、ヤタガラスの怖ろしさを読み解く鍵があるから。

ではまた次回。

参考文献・お薦め書籍

参考文献と、お薦め書籍など。既に絶版のものもあるので、ご了承ください。なお、第三回目と第四回目の参考文献リストも参照のこと。

【このゲーム及び続編について】

古事記日本書紀について】

ナチス・ドイツヒトラーについて】

【日本の神について】

  • 「日本の神様ご利益事典 知っているようで知らない八百万神の履歴書」(茂木貞純監修/だいわ文庫)
  • 「『日本人の神』入門 神道の歴史を読み解く」(島田裕巳著/講談社現代新書

【妖怪・モンスターについて】

【戦争を扱った文学】

天皇天皇制・皇室について】

【桜について】

【このゲームの元ネタと思われるもの】

【戦争について】

ナショナリズムについて】

【明治・大正・昭和の日本文化について】

【狐の「葛の葉」について】

【「日本の伝統」とされるものについて】

  • 「日本人のしきたり」(飯倉晴武編著/青春新書INTELLIGENCE)
  • 「日本人 数のしきたり」(飯倉晴武編著/青春新書INTELLIGENCE)

【神社について】

  • 「TJMOOK ふくろうBOOKS おとなの神社入門」(宝島社)

【教科書について】

【歴史教科書問題・歴史認識問題について】