ろーだいありー

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シリーズ記事「『超國家機関ヤタガラス』はなぜ怖ろしいのか?」・第六回目

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(※画像はイメージです)

シリーズ 「超國家機関ヤタガラス」はなぜ怖ろしいのか?

・第六回目「『第伍話・地底参佰米の対決』に見るこのゲームの歴史観と、『新しい歴史教科書』との符合点」


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はじめに

※このブログは、『女神転生(メガテン)』ファンの個人による非営利ブログであり、発売元のゲームメーカー様とは一切関わりありません。予めご了承ください。

 

このシリーズ記事は、『デビルサマナー葛葉ライドウ対超力兵団』(以下『超力兵団』。「プレイステーション2」専用ゲームソフトとして2006年に「アトラス」社より発売されたもの。『メガテン』シリーズの一種で、ジャンルはRPG。現在は絶版)に登場する、「超國家機関ヤタガラス」(以下「ヤタガラス」。モデルは「国家神道」であり、極右思想・天皇崇拝思想を持つ)という架空の組織を「徹底的に批判するため」と、「この『超力兵団』そのものが持つ問題点を徹底的に暴いて批判するため」、さらに「この『葛葉ライドウ』シリーズはもう封印作品とすべきである。特に『超力兵団』についてはどんな形であれ(ゲームソフトに限らず)、二度と世に出すべきではない」ということを訴えるために書くものである。

なぜこういうことを訴えるのかは、これまでの記事を参照してほしい。今回の記事にもその答えは示している。

この『超力兵団』に関しては、新作(三作目)・リメイク・移植・配信・メディアミックスなどの全てを、今後は一切出して欲しくない理由のうち、ひとつを先に説明しておく。

「今、日本の学校で使われている『歴史教科書』の記述が、どんどん後退している(特に「近代の戦争における、日本の加害歴史」をあまり書かないようにしている)」という事態に危機感があり、それから「日本が引き起こした戦争を美化するような、『歴史修正(改竄)主義』が台頭している(「歴史修正(改竄)本」が書店に溢れかえっている)」事態にも危機感があるため。
それとどう関係があるのかというと、この『超力兵団』は、「戦前(1931年)の大日本帝国」(あくまで架空のものだが)だけを舞台とした作品だからだ。今後このシリーズを作るとなると(リメイクも含む)、「このような、『後退した歴史教科書』・『歴史修正(改竄)本』でしか日本の歴史を学んだことのない若者向けのシナリオを作るのではないか」、「歴史修正(改竄)主義者向けのシナリオを作りそうで、子どもと若者には特に危険だ」という懸念があるから、一切出して欲しくないと訴えているわけだ。

この記事には、ゲームの「ネタバレ」も多く含むので注意。

また、このゲームをプレイされたことが無い方には理解できないであろうことは、お断りしておく。

私のTwitter(現在は諸事情により非公開アカウントとしている)、Google+での発言、及びサブアカウントのブログ「悪魔ハンター桐嶋ローダVS八咫烏」(https://kirishimaloda6915.hatenablog.com/)の記事の一部も再録している部分がある。

もうひとつお断りしておくが、本記事と前回までの記事で、この『超力兵団』の「設定・世界観・キャラクター描写・ストーリー」などに関する事柄はすべて、PS2のゲーム『超力兵団』及び、続編の『デビルサマナー葛葉ライドウ対アバドン王』(こちらもPS2専用ゲームソフト。2008年発売。現在は絶版)と、この二作の説明書・各種公式攻略本や、『超力兵団』の公式設定資料本のみを参考にして書いた。それ故、この二作を題材とした「メーカー公認のコミック・ノベライズ・ドラマCD」といったものは一切参照していない(私はこの類の商品は一切購入せず、閲覧・視聴もしないため)。予めご了承あれ。

ブログコンセプトの一部変更に関して

これまで、この「『超國家機関ヤタガラス』はなぜ怖ろしいのか?」では、主に「ヤタガラス」の怖ろしさを説いてきたわけだが、「はじめに」でも書いたように、今回からは「この『超力兵団』自体もまた、怖ろしいものを含んでおり、それを告発する」というテーマも加えていくことにした。
それというのも、このブログシリーズを書いていくうち、「これまでは『ヤタガラスの怖ろしさだけを解説すればいい』と思っていたが、このゲームそのものにも多くの問題点と怖ろしい点がある」と気付いたからである。
また、このゲームの第七話は「ゲーム史上稀に見る大問題作である」と以前書いたが、それどころかこの『超力兵団』自体、「『メガテン』史上…、否、家庭用ゲーム機のRPG史上、稀に見る大問題作かも知れない」という持論も持つようになった。これに関しては後ほど詳しく解説する。

ゲームの概要・あらすじ・ヤタガラスについて・第七話について

詳しくは前回までの記事を参照のこと。

↓リンク先・第一回目

シリーズ記事「『超國家機関ヤタガラス』はなぜ怖ろしいのか?」・第一回目 - ろーだいありー

↓リンク先・第二回目

シリーズ記事「『超國家機関ヤタガラス』はなぜ怖ろしいのか?」・第二回目 - ろーだいありー

↓リンク先・第三回目

シリーズ記事「『超國家機関ヤタガラス』はなぜ怖ろしいのか?」・第三回目 - ろーだいありー

↓リンク先・第四回目 

シリーズ記事「『超國家機関ヤタガラス』はなぜ怖ろしいのか?」・第四回目 - ろーだいありー

↓リンク先・第五回目

シリーズ記事「『超國家機関ヤタガラス』はなぜ怖ろしいのか?」・第五回目 - ろーだいありー

 最終話までのあらすじ紹介

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(※画像はブログ執筆者のコレクションより。イメージです)

 

ここでは、今までは紹介していなかった、『超力兵団』の幕開(プロローグ)~第拾弐話(最終話)までのあらすじをざっと解説しておこう。

時代は1931年(ただし、年号は「大正20年」という、ありえないもの。史実では「昭和6年」)。主な舞台は「帝都・東京」(ちなみに当時は「東京市」で、「東京都」ではない)。

・幕開「十四代目葛葉ライドウ襲名の儀」
これは本編前のプロローグで、ゲームのチュートリアル的なもの。
主人公が「十四代目・デビルサマナー葛葉ライドウ」を襲名する儀式・試練に挑む。デビルサマナーとは「悪魔召喚師」という意味。
晴れて十四代目襲名の試練に合格し、ここからは喋る黒猫「ゴウト」(ゴウトドウジ)がお供することになる。ちなみに第一回目でも書いたが、ゴウトの設定に関しては何かおぞましいものを感じる。しかしそれはまたいずれ。
やがてライドウは、帝都・東京の筑土町(神楽坂がモデル)にある「鳴海探偵社」で、表向きは探偵助手として働くようになる(裏では「デビルサマナー」として、帝都の守護をしている)。上司は「鳴海」(フルネームは不明)という探偵の男。
そんなある日、一人の少女から「私を殺してください…」と依頼される。だが彼女は突然、謎の人物たちに連れ去られ、行方不明となってしまうのだった…。
ちなみにこのプロローグだが、タイトルの「~襲名の」というのがかなり気になる。天皇が行う「○○の儀」を思わせるからだ。この時点で、このゲームは「天皇を中心とした話」だと分かるのではないだろうか(天皇嫌いの人は、このタイトルだけで嫌悪感を覚えるのでは…)。何せ「ヤタガラス」は天皇崇拝団体なのだから。

・第壱話(第一話)「消えた資産家令嬢」

プロローグで行方不明になった少女は、「大道寺伽耶」(だいどうじ・かや)という、筑土町に住む資産家の娘であったことが判明する。なお「大道寺」の由来は小説『女王蜂』(横溝正史)であろう(この小説のヒロインが「大道寺智子」。伽耶のモデルは智子と考えている)。彼女の行方を追うために、情報収集をしていくのだが…。

なお、「伽耶」という名前にも何か秘密があると思うが、これは別の回で検証する予定。

・第弐話(第二話)「怪人赤マント現る」
帝都に「怪人・赤マント」なる謎の人物が出没する、という噂が広まる。この噂を追っていくと…。

怪人・赤マントとは、どこか『怪人二十面相』(江戸川乱歩)を髣髴とさせる。
なお、このシナリオで「反社会的勢力」(あえてこう表現する)の者たちが味方になるが、たいへんよろしくない。「反社会的勢力の人は、コワモテでも本当はいい人」という、間違ったイメージを子どもたちに植え付ける可能性がある(刺青の者が銭湯に入っているのも、誤解を招きそうだ。当時は認められていたとしても)。それから、ライドウは未成年なのに「遊郭」に入れるのも問題があるだろう(この二点に関してはまたいずれ)。
また、この弐話では児童ポルノまがいのイベントが発生するので注意(この際はっきり言うが、こういうシーンは入れるべきではない。エロが嫌いな人はやらない方がいい、と第一回目に書いたのはこれが理由)。その割には、パッケージ裏の「コンテンツアイコン」に「セクシャル」が無いのはおかしい。

・第参話(第三話)「ダークサマナー見参」
伽耶のおじの清(きよし)は失踪していたが、「大道寺紡績工場」に居るとの情報を得る。そこへ向かうと…。
ここで「ダークサマナー・ラスプーチン」(実在の「ロシアの怪僧・ラスプーチン」がモデルだが、実は本物ではない…)が現れ、妨害してくる。
ちなみにダークサマナーとは、デビルサマナーと同じだが、どちらかというと「私利私欲の為に悪魔召喚術を使う者」のことである。
伽耶のおじが「清」(「しん」とも読める!)というのも、何かの意図があるように思うが…。これはまたいつか。

・第四話「港街連続失踪事件」
港町の晴海町で、貿易船の積荷が消えるという事件が発生する。この事件を追っていくと…。
ここでラスプーチンと対決する。

・第伍話(第五話)「地底参佰米の対決」
タイトルは、現代語に訳すと「地底300メートルの対決」。
この話で初めて「川野定吉」(海軍軍人)と「宗像」(陸軍少尉。フルネームは不明)が登場する。今回詳しく解説するシナリオ。
この第伍話で、ようやく伽耶を救出するのだが…。

・第六話「伍色不動の秘密」
助けた伽耶は、鳴海探偵社に潜伏することになったが、彼女はどこか様子がおかしい。美しいロングヘアもばっさり切ってしまうし…。
そして今度は、彼女は自ら姿を消してしまうのだった。
実は、伽耶には何者かが憑依していたのである。これを「伽耶に憑きし者」という。

・第七話「呪われた探偵」
これは「ゲーム史上稀に見る大問題作」であると、この「ヤタガラスはなぜ怖ろしいのか?」シリーズ第二回目~五回目で詳しく解説した。
詳細はそちらを参照して欲しいが、要約すると「日本にとって重要な海軍大将(実は大正天皇)が、敵の『ヒトコトヌシ』に呪われたので、ライドウがその呪いを身代わりとして引き受け、術者を倒しに行く」という話。呪いをかけるように命じたのは宗像だというが…。

・第八話「鉄塔の悪魔」
この話では、宗像を追って「謎の鉄塔」へと向かうことになる。これも興味深いので、別の回で検証したい。

・第九話「弐人の召喚師」
八話のラストで、以前倒したはずのラスプーチンにより「パラレルワールド」に飛ばされたライドウとゴウトだったが、パラレルワールドに住むライドウたちの協力により、元の世界に帰ることに成功する。

・第拾話(第十話)「帝都炎上!」
元の世界に戻ったライドウとゴウト。探偵社に戻ると、鳴海は居らず、置手紙が残されている。「宗像さんを止めに行くことにした。お前は来てはならない」と…。鳴海に何があったのか?

この話で、ついに宗像と対決するのだが…。
この第拾話も、七話に次いでかなりの問題作だと見ているが、これはまたの機会に。

・第拾壱話(第十一話)「宇宙への挑戦」
第拾話で、宗像の製造した「巨大ロボ」が帝都を破壊し始めた。これを止めるため、宇宙へロケットを飛ばし(ライドウの呼び出す仲魔一体と、ゴウトが乗り込んでいる)、宇宙に存在する「巨大ロボの動力源」(その名は「惑星タイイツ」)を止めることになる。
ちなみにこの話で、ラスプーチンの正体が判明する。実は本物のラスプーチンではなく、彼を模した「アンドロイド」であった。

・第拾弐話(第十二話)「人の想い 心の絆」(最終話)
最終話では、事件の「真の黒幕」である「伽耶に憑きし者」と対決するため、最終ダンジョンへと向かうことになる…。
この最終話に関しては、いろいろと興味深い点もあり、また数多くの問題点も含むので、これは別の回で詳しく検証したい。

今回のテーマは「第伍話の問題点」だが…

前回までは、第七話の問題点を見てきたが、今回は遡って第伍話を取り上げよう。
テーマは「『第伍話・地底参佰米の対決』に見るこのゲームの歴史観と、『新しい歴史教科書』との符合点」である。
今回は、第伍話(ちなみにセーブデータを見ると、なぜか「第五話」と表記される)を徹底解剖し、「このゲーム独自の『歴史観』の怖ろしさ」を見ていこうと思う。と同時に、「新しい歴史教科書をつくる会」(以下「つくる会」)というグループが2001年に発売した『市販本・新しい歴史教科書』(扶桑社。中学生用歴史教科書として、ごく一部の中学校で2002年度から四年間使われたものの市販本。以下『新しい歴史教科書』)との符合点も指摘したい。

↓なお、『新しい歴史教科書』についてはこの記事を参照のこと。

『市販本 新しい歴史教科書』(2001年発売)を批判する。※追記あり - ろーだいありー

なぜ第伍話を選んだのかというと…

まず、なぜ第伍話か? というと、この第伍話から『超力兵団』が持つ怖ろしさが露わになっていくからである。第四話まではそうは思わなかったのだが、この第伍話から「このゲームは、特に青少年には危険かも知れない」と思うようになったのだ(決定的なのは、前回までに解説した第七話なのであるが…)。
それと、なぜ『新しい歴史教科書』か? ということも解説すると、『超力兵団』の発売が2006年3月であること、『新しい歴史教科書』が使われていた(ごく一部の中学校に過ぎないが)のが2002年4月~2006年3月までということを考えると(さらに『市販本・新しい歴史教科書』の発売が2001年であることも含めて)、この『超力兵団』の歴史観の形成に、『新しい歴史教科書』が関係しているのでは…、という憶測が成り立つからである。
そのような憶測をしてしまうほど、このゲームと『新しい歴史教科書』には符合する点があるということだ(あるいは、「つくる会」が提唱する歴史観「自由主義史観」に影響されているのかも知れない。またはその前身と言える「司馬史観」の影響?)。それを見ていこうと思う。
まず、第伍話のあらすじを前半部分から紹介する。

第伍話前半のあらすじ

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(※画像はブログ執筆者のコレクションより。イメージです)

 

ある日のこと、鳴海探偵社に、知り合いの新聞記者・朝倉タヱが現れる。
タヱによると、彼女が働いている新聞社に「軍部の人間」から一本の電話があった、という。
電話の主によると、「陸軍が秘密裏に行っている計画を教える」と言うのだ。
タヱはその軍部の者と、霞台という場所(陸軍省があるところ。帝国議事堂、裁判所があるので、霞ヶ関と永田町がモデルだろうか)で会うことになった。
一人では危険だというので、ライドウも同行することになるのだが…。

ここでタヱと会うことになっていたのが、軍人の川野定吉である(この男、陸軍兵のように見えるが、実は海軍のスパイである)。
しかし、彼女は霞台で突如行方不明になる。彼女を追ううちに、川野と知り合うことになり、重大な情報を得る。タヱも無事に見つかる。
この情報を元に、陸軍の軍人「宗像」を追うことになるが…。

ここまでが前半。後半では、川野の協力の下、重大な秘密が隠された「陸軍地下造船所」に潜入することとなる。

川野定吉のセリフについて

まず、川野定吉のセリフを読み解いていく。

川野は陸軍に潜入していたが、ここで「怖ろしいものを見た」という。陸軍少尉・宗像の命令で「富国強兵を謳い、軍備を増大する計画」が進められているそうだが、それは「信じられないような方法」で行われているのだという。

それは、「人間ではない化け物たちが、軍備に使われている」というのだ。

川野は怖ろしくなって逃げ出し、新聞社に助けを求めたのだ。

その後、川野が持っていたが紛失した「この計画に関する資料」を探すことになる。資料を全て集めて見せると、川野はさらに詳しい話をする。ここでは川野のセリフを紹介する(基本的には原文のままである)。

 

「確か…、そうそう…、ここではな、恐ろしい計画が進行しているんだ。宗像少尉の指示で行われている、超力兵団計画というのがそれだ。不要となった戦艦を利用し、不沈艦を造り上げる…。そしてそれに不死の兵隊ヨミクグツを乗せ敵国に送るという計画らしい。ヨミクグツってのは、宗像直属の憲兵隊…、そいつらの名称だ。あいつらは全員、死んだ人間から作り出された兵隊らしいんだよ。馬鹿げた話だと思うだろうが、全て本当の事なんだ。…地下の秘密基地を見れば、オレの言葉を信じるだろうぜ。あそこには人外の者がたくさん集まっていたからな。人間なのは…、計画を遂行する宗像少尉とその傍にいる少女だけ。まったく、恐ろしい所だった(後略)」

 

その「少女」というのが、実は伽耶であることも判明する。ちなみに、霞台に居る陸軍兵によると、彼女は「預言者」であり、その言葉のお陰でこの「超力兵団計画」が進んでいるのだ、とか。

さらに、ここに居る陸軍兵のひとりによれば、この計画は「諸外国戦略」だという。しかし後に分かるが、実はこれは帝都破壊計画なのである。

後に、ここに居る陸軍兵は「あれが超力兵団計画の全容だと…? あんな殺りく兵器を造るために我々は…? 列強の脅威を跳ね除け民衆を導くと言ったあの言葉は偽りですか!? 答えてください! 閣下! 宗像閣下ぁぁ!!」と嘆くのだが、これを見ると宗像は、「超力兵団計画」とは「欧米列強の脅威から日本を護るためのもの」と説明していたのだろう。

伽耶をさらったのは宗像であったのだろうか? 伽耶を救うために、川野の協力で「陸軍地下造船所」へと潜入する運びとなる。

「敵国」とはどこの国を指すのか?

さて、ここでは川野定吉のセリフをもっと詳しく読み解いていこう。

宗像は、改造した戦艦を「敵国へ送る」というのだが(つまり宗像は、戦争を仕掛けようとしている)、この「敵国」とはどこのことかは、一切明かしていない。では、「敵国」とはどこを指すのかを考えてみよう。
恐らくは「アメリカ」で間違いないであろう。
『デビルサマナー葛葉ライドウ対超力兵団 超公式ふぁんぶっく』の36ページにある、宗像の説明文に、「やがて訪れるであろう大国と日本との戦争を予見し~」、「~日本は(中略)大国によって蹂躙されるであろう。(後略)」などと書いてある。「大国」とは紛れもなくアメリカのことだろう。これを読むと、やはり「敵国」とはアメリカを指すと見ている。
でも、この本の書き方だと「やがてアメリカが勝手に日本を攻めてきて、日本を蹂躙する」(だから宗像は、その前にアメリカを攻撃しようとした?)と主張しているように思えるのだが…。実際は、日本(天皇)が戦争を始めなければ、アメリカに攻められることもなかったのだけど…。一方的にアメリカを目の敵・悪人にしているのではないのか。このゲームでは妙に「欧米列強の脅威」、「欧米列強は敵」を強調する軍人が多いのも、気になるところだ(その割には、「大日本帝国もまた、近隣のアジア諸国から見れば、侵略戦争ばかりする脅威の帝国だった」という説明が無いのはなぜだろう。これはまたいつか取り上げたい)。

これを深読みすると、製作者は「日本の近代における戦争はすべて自衛のためであり、侵略ではない」と主張したいのではないのか? とも思える。これは間違った歴史観である。
しかも、この歴史観は『新しい歴史教科書』とも通じるもので…。これは後で解説する。

「所詮ゲームだから、どんな歴史観を使ってもいいだろう」と言う人も居るかも知れないが、プレイする子どもたちへの影響力も考えて作るべきだ。たとえフィクションであろうと、「間違った歴史観で日本の近現代を扱った作品(ゲームに限らず)」は作って欲しくない、と私は強く思う。

第伍話後半のあらすじ

では、第伍話の後半部分のあらすじを紹介する。

陸軍地下造船所に潜入したライドウ。妨害を跳ね除け、最深部に到達する。
その最深部には祭壇のようなものがあり、そこで「伽耶を使って怪しい儀式を執り行っている宗像」を発見する。
ここで宗像が言うセリフに注目したい(後で解説する)。
この話では、宗像に協力出来そうでいて、実は出来ない、という点にも注目しよう。
宗像は、「アビヒコとナガスネヒコ」を召喚し、逃げていく(この二体についても、後で解説しよう)。
この二体のボスを倒せば、伽耶を救い出すことが出来る(ちなみに、このボス二体は、倒した後は「悪魔合体」で生成可能になる)。
宗像は逃げる際、「…全ては予定通りだ。この鬼の血を使い、超力兵団計画は最終段階に入る…」とつぶやく。

救出した伽耶は、鳴海探偵社に潜伏することになる。
伽耶の話によれば、彼女に流れる「鬼の血」なるものを儀式に利用するために、宗像は伽耶をさらったというのだが…。
その「鬼の血」が原因で、家族に殺されそうになったため、家から逃げ出して助けを求めたのが、プロローグでの出来事だったのだ。
なぜ家族に殺されそうになったかというと、大道寺家にはそのような掟があるからだとか…。大道寺家の娘は年頃になると「鬼が憑依する」と言われている。その前に、家族の手で殺してしまうことになっていたらしい(代々、表向きは「病死」としていたが…)。
ここまでが第伍話。

宗像のセリフを読み解く

ここでは、造船所最深部で聞ける宗像のセリフを紹介する(基本的に原文のまま)。太字の部分は、特に注目すべきところ。

 

「貴様の事は聞いておるぞ、デビルサマナー葛葉ライドウ…。お初にお目にかかる…、と言うべきか。私が宗像、超力兵団計画の提案者である。ラスプーチンから報告は受けている。計画の邪魔をする腕白小僧がおる、とな。邪魔者は消す…、というのが私の持論だが、貴様の如く子供だと不憫でもある。よって、この計画を進める訳を教えてやろう。よく聞いて考えるがよい。私の邪魔をするのが間違っているという事を…。
よいか、ライドウ、よく今の国家を考えてみよ。
大多数の民衆は貧困にあえぎ、一部の権力だけが富を得る。
国家は次々と都合の良い政策を打ち出し、弱者を抑圧していく…。おかしいとは思わんか?
本来、国は弱者の味方となるもの。それがこの国では昔から違っていた…。
天津の神々に、多くの者が討伐されていったという歴史があるのだ。
このままではこの国は…、近い将来破滅の時を迎えるであろう。
私はその、間違った観念を持つ国家を作り変えたいのだ!
そして、そのために必要な計画が超力兵団計画である。
そしてその計画に必要な人材の一人…、それがこの娘である。
葛葉ライドウ、娘の事は諦めろ。そして我が下で共に国家を作り変えるため働く意思はないか?」

 

ここで「いいえ」と答えると、宗像はアビヒコ・ナガスネヒコを召喚し、逃げ出す。

この第伍話で問題なのは、ヤタガラスを裏切って宗像に従えそうに見えても、実際は出来ない点。これはメガテニストが見れば裏切りだと思う。

『真・女神転生』の序盤なら、「ゴトウ(カオス属性)に従うか、トールマン(ロウ属性)に従うか、どちらにも従わないか」という選択肢があるのに(『真・女神転生』の場合、どの道を選んでも、東京破滅は免れないけど)。

『真・女神転生2』でも、「メシア教に従うか、ガイア教に従うか、どちらにも従わないか」という選択肢があったのだが(どのルートを選ぶかにより、ラストは変化する)。
しかし、宗像に従おうとも、ヤタガラスに従おうとも、結局は日本の破滅をもたらすのは事実だ。宗像は敵国(アメリカ?)に戦艦を送って戦争をするというし、ヤタガラスはいずれ「天皇の名の下」に、日中戦争と日米戦争を始めるのだから。どちらにしても戦争に行き着く
それならなぜ、「宗像もヤタガラスも倒す」という選択肢を入れないのだろう。それに、「ヤタガラスこそが戦争を引き起こすもの」(天皇崇拝の国家神道がモデルの時点で、それは明白であろう)とはこのゲーム中では一切明かさないのもおかしいと思う。明かしてしまうと、宗像を倒したくなくなるから、わざと明かしていないとしか思えない。製作者自身は、天皇崇拝の国家神道の存在が、戦争に繋がったことぐらいは理解しているはずだから。そして、明治から昭和までの天皇が、「陸海軍の大元帥」であったことも知っているはずだ(前も書いたが、このゲーム上の大正天皇は「海軍だけの大将」となっているのは気になるが…)。

前回、「第七話は『日本人なら、天皇を護って日本(帝都)を救いたいと思うのは当然でしょ?』という、製作者のメッセージが押し付けがましい」、といった旨のことを書いたのだが、これはこの第伍話にも言えることだ。そう、「日本人なら、宗像を倒して日本を護りたいと思うのは当然でしょ?」という、「愛国心」の押し付け(ゴリ押しとも言う)である。それに反発するプレイヤーも多く居ることを、考慮するべきであった。メガテニストの中には、「愛国者・天皇好き・右派」だけではなく、「中道派」及び「抗日派・天皇嫌い・左派」も居るのだから。

 

では次に、宗像のセリフを詳しく読み解いてみよう。

「大多数の民衆は貧困にあえぎ、一部の権力だけが富を得る。国家は次々と都合の良い政策を打ち出し、弱者を抑圧していく…」というのは、むしろ現代的な話ではある。このゲーム自体、1931年が舞台と言いつつ、開発当時(2006年3月以前)の日本の状況を反映していることは間違いないであろう。この「開発当時の日本の状況の反映」に関しては、他のシナリオでも見られるので、いずれ取り上げたいと思う。
私が思うに、宗像の言うことの方が、極右のヤタガラスの言うことよりは正しいと思う(やり方はどちらも感心しないが)。確かに日本国家は、弱者を抑圧しているのだし(今でもそう)。

「このままではこの国は…、近い将来破滅の時を迎えるであろう」というのは、「天皇崇拝のヤタガラス(国家神道がモデル)が存在する限り、ヤタガラスが『天皇の名の下に』戦争を引き起こして、いずれ大日本帝国は破滅する」ことを示しているのだろう。それは確かに間違いのないことだ。史実を紐解けば分かるであろう。
それなら、ライドウはヤタガラスにより「帝都の守護という使命を与えられている」はずなのに、なぜ「将来的には日本の破滅をもたらす、ヤタガラスという権力団体」に従っているのだろうか?
私は、「実はライドウこそが帝都・大日本帝国の破壊者であり、いずれヤタガラスを滅ぼす者。ライドウは、ヤタガラスこそが日本を破滅させる存在だと知っているから、わざと従うフリだけして、日本崩壊を待ち望んでいるのだ」という独自の説を唱えているので、「宗像に従わずに国家の破滅の時を待つ」のは正しいのである、と考えている。

 

「いずれヤタガラスのせいで大日本帝国は破滅する、ということはとっくに分かっているさ。その後は新しい国家が生まれるのだから、今すぐ作り変える必要もあるまい。そして宗像よ、お前の作ろうとしている国家もまた、ヤタガラスと同じでろくでもないものだろう。だから、お前のやることには同意しない。お前を倒す」と、私の中のライドウは言っているのではないか、と。
この自説については、別の機会に詳しく明かそうと思う。

さらに宗像のセリフを読み解くと…、恐るべきことが…

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(※画像はブログ執筆者のコレクションより。イメージです)

 

もう少し宗像のセリフを解読しよう。

「天津の神々に、多くの者が討伐されていったという歴史があるのだ」という部分は、見落としがちだが非常に重要である。 このゲーム上の日本の歴史では、「『古事記』・『日本書紀』が実話になっている(特にこの中の「神武東征伝承」が強調されている)」ことが分かる。ここで戦うボスが、神武天皇(史実では架空の人物だろうが)に討伐されたという「アビヒコとナガスネヒコ」であることから見ても、明らかである。

この点はかなり大問題だと思う。このブログでは、『超力兵団』における歴史観のことを独自に「ヤタガラス史観」と呼ぶことにしている。
ちなみに、ナガスネヒコ(長髄彦。ナガスネビコとも言う)は『古事記』と『日本書紀』に出てくるのに、彼の兄というアビヒコ(安日彦)は、この二つには出てこない。『中世日本紀』という、『古事記』に似た話にだけ出てくるらしいけど…。この中では、アビヒコはナガスネヒコの兄とされているようだ。
こうして見ていくと、このゲームでライドウが活躍すること(ヤタガラスに従わない者を倒していくこと)自体が、「神武東征伝承」をゲーム化したようなもの、とも言える(後のシナリオで戦うのも、天皇とは敵対する者たちが多いことを考えれば、そういうことになろう)。「ナガスネヒコたちを倒すと、その後は悪魔合体で仲魔として使える」、というのも、「神武天皇が土着の国津神・豪族たちを武力で服従させていった」姿と重なる。

 

では、これの何が問題かというと…。
そもそも『古事記』・『日本書紀』とは何か、その中の「神武東征伝承」とは何か、ということをよく考えてみるがいい。
『古事記』・『日本書紀』は、単なる神話でも真実の歴史書でもなく、古代の神話と天皇家の歴史を繋げて、天皇家に都合よく脚色された「歴史物語」であると考えている。つまり「天皇は神の子孫で、日本を支配するのに相応しいのだから、天皇に従わない者(天皇にまつろわぬ者)は倒したり、力で屈服させて構わない」ということを正当化する目的で編纂されたものだ。特に「神武東征伝承」はその傾向が強い。

「どんなに残酷なことでも、神の子孫たる天皇がやることだから、全て正しい」と主張したかったのだろう。実際、『古事記』・『日本書紀』には残酷で生々しい描写も多い。
それをシナリオのベースにしてしまうと、その時点で「皇国史観」(天皇を日本の中心とする歴史観)になってしまうし、「天皇崇拝を称讃するもの」、「『聖戦』(天皇の名の下に行われる戦争)は正しいと主張するもの」、「天皇にまつろわぬ者は差別・排除しても構わないと教えるもの」になるのだ。その危険性を考えないで作るべきではない。特に青少年向けのゲームであればなおさらだ。さらにこのゲームは「大日本帝国時代の、軍国主義だった頃の日本」が舞台、という点も危険なのだ。
「ヤタガラス史観」は皇国史観そのものである。このような歴史観を持つ「青少年向けの物語」は、実際の1931年の日本(このゲームの時代と同じ)で出すなら相応しいのだろうが、2006年という時代に出すものではない。あまりにも時代遅れで危険だからだ。さらに、今の時代では尚更ではなかろうか。

だからこそ、先ほども書いたように『超力兵団』自体、「『メガテン』史上…、否、家庭用ゲーム機のRPG史上、稀に見る大問題作かも知れない」と考えているわけだ。

そもそも、このゲームの製作者には、「皇国史観は戦争に繋がった怖ろしいもの」という認識があるのかどうかが、非常に疑わしい。その認識があれば、『古事記』・『日本書紀』をシナリオのベースにしようとは考えないと思うのだが。「『メガテン』なら、日本の神話である『古事記』などをベースとしてもいいだろう」と軽く考えるべきではなかった。また、「天皇に従う方を主人公とし、従わない者を悪人とする」単純な構造もまた、たいへん好ましくない。特に、「天皇嫌いのプレイヤー」の怒りを買うのではないか(これについてはまたいつか触れたい)。

前回、子どもは「まだゲーム(フィクション)と現実の区別がつきにくい」のだから、「『尊い天皇を護らないと日本が滅びる』という、第七話のような話は作るべきではない」といった旨のことを書いたが、『古事記』・『日本書紀』(特に「神武東征伝承」)を「本当にあったこと」にしてしまうのも、子どもには悪影響がありそうだと思っている(特にこのゲームの時代設定と世界観では…)。

なお、『古事記』をシナリオ・世界観のベースとしたゲームは他にもあり、例えば、奇しくも『超力兵団』の発売日から約一ヵ月後にリリースされたプレイステーション2ソフト『大神(おおかみ)』(『ゼルダの伝説』を思わせるアクションアドベンチャーゲーム。カプコンより発売)がある。

こちらは古代の日本が舞台で、軍国主義的なものはほぼ見られない分は安心かも知れないが、「旭日旗」を思わせるものが出てきたりするのはあまり好ましくない。

天皇嫌いの人は、天皇を称えるために作られた『古事記』をゲームのモチーフにすること自体、絶対ダメ、と言うかも知れない。

また『大神(おおかみ)』の主人公は、皇祖神と同じ名前の「アマテラス」という狼で、このアマテラスが「乱れた日本を救う」シナリオも、「天皇の祖先が日本を救うなんて、皇国史観か?」と思わないでもないが…。「神武天皇」が現れる以前の話なので、まだいい方なのかも知れないけど。

歴史認識問題と関わる?

それからもうひとつ指摘しておきたいのだが、「天津の神々に、多くの者が討伐されていったという歴史があるのだ」と宗像が言うのは、このゲームに出てくる一般人には、「太古の昔にそのような戦いの歴史があった」ことは知られていない、ということではなかろうか。確かにこの時代(1931年)の学校での歴史の授業では、「神々の子孫である神武天皇は実在した。神武がヤマトを統制したのだ」などと教えていたのだろうが、「大昔、本当に天津の神々が日本に存在した。天津神と国津神の戦いも本当にあったことだ」と信じ込む人は、あまり居なかったのではないか(小さい子どもなら「神話は本当にあった、神様も実在した」と思うかも知れないが、大人になると信じなくなるものだし)。

これは何となくだが、宗像の姿と、「韓国や中国など近隣諸国の人々が、歴史修正(改竄)主義の日本人(特に「つくる会」の関係者)に対して、『日本には、侵略戦争で近隣アジアの国家と人々を蹂躙したという過去があるのに、なぜ歴史を日本にだけ都合よく改竄した教科書を出したりするのだ!』と抗議している姿」は重なるのである。

宗像のセリフを無視して戦うのは、「日本に都合の悪い過去を暴く奴は叩き潰せ」という、悪いメッセージを子どもたちに植え付けることになるかも知れない。それもかなり問題だ。

歴史認識問題に関しては、またいずれ詳しく解説しよう。

『新しい歴史教科書』との符合点について

では、『新しい歴史教科書』と符合する点がこの第伍話にあるか、ということを見ていく。
やはり「ある」と見ていいだろう。まず、「神話を本当にしてしまう」ところはまさにそうだ。『新しい歴史教科書』には、「神武天皇の東征伝承」が載っていて、「ヤタガラス(八咫烏)」と「ナガスネヒコ(長髄彦)」も出てくる…(歴史教科書に載せるようなものではないと考えている)。他にも「天岩戸伝説」などが載っているページもある。

また、『新しい歴史教科書』は、「『天皇中心』で、天皇のしたことは戦争であっても正しい」とする「皇国史観」を、さらに発展させたものと考えるが、先ほども書いたように「ヤタガラス史観」も、はっきり言えば「皇国史観」だから、符合する(このゲームで「天皇」が出てくるのは七話だけとはいえ、天皇崇拝の極右組織である「ヤタガラス」を中心に描いているのだから「天皇中心」と見ていいだろう)。

そして、ひょっとすると「ヤタガラス史観」では、「日本の戦争はすべて自衛戦争であり、侵略戦争ではない。悪いのは他国」、ということになっているのかも知れない、と読めてしまうところも、この教科書と符合するのである。川野定吉のセリフから分かる「宗像のやろうとしていること」(「アメリカと思われる国に戦艦を送る」)、資料本にある宗像の説明文などを検証すれば…。そう、『新しい歴史教科書』は、「日本の近代戦は侵略ではない」と主張している教科書だから。

さらに、『新しい歴史教科書』は基本、反米路線である。近現代の記述で、そのものズバリな「欧米列強の脅威」という見出しがある。本文中でも、欧米列強(その中でも特にアメリカ)の悪さや脅威ばかり強調しているところがあり(その代わり日本の悪さにはあまり触れない)、それもまた、このゲームと似ているのではと思ってしまう。

第七話に関して補足

ついでに、前回までに解説した「第七話・呪われた探偵」と、『新しい歴史教科書』との類似点も見ておこう。

前に詳しく解説したように、第七話は「教育勅語」をそのままゲーム化したものではないか、と考えている。特に「有事の際には天皇と国家に尽くせ」(要約)という部分を。そして『新しい歴史教科書』では、「教育勅語全文を何の批判もなく載せている」ので、教育勅語を称讃したい、復活させたいという意図があるのでは、と思う。大日本帝国憲法も称讃しているし…(しかしこの本では、日本国憲法は「アメリカの押し付けだから嫌い」らしい。これは、憲法九条を無くしたいという意図があると考えられる)。さらにこの教科書は「天皇賛美・天皇中心」要素が強いのである。その点では、第七話と『新しい歴史教科書』は非常に似通っていると思う。

さらに、第七話に関してもう一言強く主張しておきたいのは、「天皇を命がけで護り、救わないといけない」シナリオ自体、「二十一世紀に発売する青少年向けゲーム」の物語としては、非常に相応しくないものである、ということだ。

…それより、「極右のヤタガラスを味方とする(裏切ることはできない)」設定自体もまた、二十一世紀を生きる子どもたちには非常に相応しくないものだ。「1931年に生きる子どもたちには相応しい」のかも知れないけど。

まとめ

では、今回のまとめ。

  1. 第伍話では、陸軍少尉・宗像「敵国に不沈の戦艦と不死の軍隊を送る」という、恐るべき計画を立てていることを知るが、この敵国とはアメリカであろう。これは「(このゲーム上の日本ではまだ起きていないが)日米戦争の開戦責任はアメリカにある。日本は自衛のために戦ったんだから、悪くない」と主張したいのではないか、とも思える。
  2. 宗像に協力する、ヤタガラスに従う、どちらも倒す、という選択肢を入れるべきである。『メガテン』ならなおさらだ。極右のヤタガラスにしか従えないのはダメだろう。「愛国心」をゴリ押しすべきではない。
  3. 宗像によると、このゲーム上の日本では、『古事記』と『日本書紀』が本当にあったことになっているようだ。特に「神武東征伝承」が実話になっていると思われるが、このような歴史観は「皇国史観」である(このゲームの歴史観を「ヤタガラス史観」と勝手に呼ぶが、これは皇国史観そのものだ)。2006年発売のゲームでは使ってはいけない歴史観である。ライドウが活躍すること自体、「神武東征」を思わせてしまうところもよくない。
  4. 第伍話は、『新しい歴史教科書』と似たところがある。特に「神話の扱い」と「戦争観(「日本の戦争は自衛のため」、という考え)」、「皇国史観を使うところ」に関しては非常に似ているのではないか、と(このゲーム全体が似ているといえば似ているのだが…)。前に解説した第七話も、『新しい歴史教科書』と似通っている。

おわりに

今回は、第伍話を検証し、さらに『新しい歴史教科書』との符合点も見てきた。

次回テーマはまだ未定だが、次もまたこのゲームの問題点、ヤタガラスの怖ろしさなどを伝えていく予定である。

では、また次回。

参考文献・参照ゲームソフト・お薦め書籍・お薦め映画DVD

今回の参考文献など。今回はお薦めのDVDも入れた。なお今回は「参考にはしたがお勧めはしない」ものも含まれるので、そのようなものには「※お薦めしません」と付けてある。

今回は一部に解説文も付けたので、参照して欲しい。前回までの参考文献も参照のこと。

※すでに絶版のものもあるのでご了承下さい。

 【参照ゲームソフト・『メガテン』シリーズ】

  • 「デビルサマナー葛葉ライドウ対超力兵団」(プレイステーション2/発売元・アトラス)
  • 「デビルサマナー葛葉ライドウ対アバドン王」(プレイステーション2/発売元・アトラス)
  • 「真・女神転生」(スーパーファミコン・ゲームボーイアドバンス・プレイステーション/発売元・アトラス)
  • 「真・女神転生2」(スーパーファミコン・プレイステーション/発売元・アトラス)
  • 「真・女神転生デビルサマナー」(プレイステーションポータブル/発売元・アトラス)

【参照ゲームソフト・その他】

  • 「大神(おおかみ)」(プレイステーション2/発売元・カプコン)
  • 「ファミコンミニ05 ゼルダの伝説1」(ゲームボーイアドバンス/発売元・任天堂)
  • 「ゼルダの伝説 夢幻の砂時計」(ニンテンドーDS/発売元・任天堂)

【お薦め映画DVD・戦争映画編】

  • 「キャタピラー」(若松孝二監督/発売元・ジェネオン・ユニバーサル・エンターテイメント)

・解説/江戸川乱歩の『芋虫』を髣髴とさせる、第二次世界大戦時代を扱った反戦映画。R-15指定だが、ぜひ観て欲しい。エロ・暴力・流血描写を含むという点は『超力兵団』と通じるかも知れない(さらに「大日本帝国時代の日本」が舞台であり、江戸川乱歩が元ネタというのも…)。「国家に従った者の末路」をその目でよく見るがいい。そして、日本軍の暴虐さも知るがいい。

  • 「ジョニーは戦場へ行った」(ドルトン・トランボ監督/発売元・角川書店)

・解説/これもどこか『芋虫』を思わせる。こちらは第一次世界大戦の時代を扱っている(『芋虫』も第一次世界大戦時代の話)。

  • 「日本のいちばん長い日」(原田眞人監督/発売元・松竹/ブルーレイ版もあり)

 

(※以下は参考文献・お薦め書籍など)

【このゲーム及び続編の本】

  • 「デビルサマナー葛葉ライドウ対超力兵団 超公式ふぁんぶっく」(ファミ通編集部責任編集/エンターブレイン)
  • 「デビルサマナー葛葉ライドウ対超力兵団 超公式完全本」(ファミ通編集部責任編集/エンターブレイン)
  • 「デビルサマナー葛葉ライドウ対アバドン王 公式ガイドブック」(ファミ通編集部責任編集/エンターブレイン)
  • 「デビルサマナー葛葉ライドウ対アバドン王 超公式完全本」(ファミ通編集部責任編集/エンターブレイン)

【その他のゲームの本】

  • 「カプコンオフィシャルブックス 大神 攻略之書」(カプコン)
  • 「ゼルダの伝説 夢幻の砂時計 ザ・コンプリートガイド」(メディアワークス)

【「つくる会」及びメンバーによる書籍】

  • 「市販本 新しい歴史教科書」(西尾幹二代表執筆者/扶桑社)※お薦めしません。
  • 「市販本 新しい歴史教科書 改訂版」(藤岡信勝代表執筆者/扶桑社)※お薦めしません。
  • 「日本人の歴史教科書」(「日本人の歴史教科書」編集委員会編/自由社)※お薦めしません。
  • 「教科書が教えない歴史」(藤岡信勝・自由主義史観研究会著/産経新聞社)※お薦めしません。
  • 「教科書が教えない歴史 明治~昭和初期、日本の偉業」(藤岡信勝・自由主義史観研究会著/扶桑社文庫)※お薦めしません。

【「日本スゴイ」本】

  • 「外国人から見たニッポンは素敵だ! JAPAN CLASS  一方そのころ日本では…」(ジャパンクラス編集部編/東邦出版)※お薦めしません。
  • 「JAPAN 外国人が感動した! すごいニッポン」(Amazing Japan Researchers編著/宝島社)※お薦めしません。
  • 「日本はなぜ世界でいちばん人気があるのか」(竹田恒泰著/PHP新書)※お薦めしません。
  • 「だから日本は世界から尊敬される」(マンリオ・カデロ著/小学館新書)※お薦めしません。

【「つくる会」教科書批判本・「自由主義史観」批判本・歴史教科書に関する本】

  • 「あぶない教科書NO! もう21世紀に戦争を起こさせないために」(俵義文著/花伝社)
  • 「歴史家が読む『つくる会』教科書」(歴史学研究会編/青木書店)
  • 「新版 ここが問題『つくる会』教科書 歴史・公民教科書批判」(子どもと教科書全国ネット21編著/大月書店)
  • 「歴史教科書をどうつくるか」(永原慶二著/岩波書店)
  • 「とめよう!戦争への教育 教育基本法『改正』と教科書問題」(高橋哲哉・俵義文・石山久男・村田智子執筆/子どもと教科書全国ネット21編/学習の友社)
  • 「教科書が危ない 『心のノート』と公民・歴史」(入江曜子著/岩波新書)
  • 「<つくる会>分裂と歴史偽造の深層 正念場の歴史教科書問題」(俵義文著/花伝社)
  • 「こんな教科書子どもにわたせますか 『つくる会』の歴史・公民教科書批判」(子どもと教科書全国ネット21編/大月書店)
  • 「徹底検証 あぶない教科書 『戦争ができる国』を目指す『つくる会』の実態」(俵義文著/学習の友社)
  • 「史実が示す 日本の侵略と『歴史教科書』」(吉岡吉典著/新日本出版社)
  • 「『つくる会』教科書はこう読む! 隠された問題点の数々」(上杉聰・君島和彦・越田稜・高嶋伸欣著/明石書店)
  • 「歴史教育と教科書 ドイツ・オーストリア・そして日本」(近藤孝弘著/岩波ブックレット)
  • 「『自由主義史観』批判 自国史認識について考える」(永原慶二著/岩波ブックレット)
  • 「消され、ゆがめられた歴史教科書 現場教師からの告発と検証」(久保井規夫著/明石書店)
  • 「歴史教科書 何が問題か 徹底検証Q&A」(小森陽一・坂本義和・安丸良夫編/岩波書店)
  • 「日本が『神の国』だった時代 国民学校の教科書をよむ」(入江曜子著/岩波新書)
  • 「教科書から消せない歴史 『慰安婦』削除は真実の隠蔽」(久保井規夫著/明石書店)
  • 「教科書攻撃のウソを斬る 『新しい歴史教科書をつくる会』がねらうもの」(子どもと教科書全国ネット21編/青木書店)
  • 「歴史教科書とナショナリズム 歪曲の系譜」(和仁廉夫著/社会評論社)
  • 「軍国美談と教科書」(中内敏夫著/岩波新書)
  • 「母と子でみる36 わたしたちの教科書」(徳武敏夫著/草の根出版会)
  • 「教科書」 (山住正己著/岩波新書)
  • 「歴史研究の現在と教科書問題 『つくる会』教科書を問う」(歴史学研究会編/青木書店)
  • 「危険な日本史像とその背景 『新編日本史』の分析と批判」(歴史教育者協議会編/あゆみ出版)

【戦争・日本軍について】

  • 「『従軍慰安婦』をめぐる30のウソと真実」(吉見義明・川田文子編著/大月書店)
  • 「東京大空襲―昭和20年3月10日の記録―」(早乙女勝元著/岩波新書)
  • 「『ポツダム宣言』を読んだことがありますか?」(山田侑平訳・監修/共同通信社出版センター)
  • 「ここまでわかった! 日本軍『慰安婦』制度」(日本の戦争責任資料センターアクティブ・ミュージアム「女たちの戦争と平和資料館」編/かもがわ出版)
  • 「学び・調べ・考えよう フィールドワーク 日本軍『慰安婦』」(アクティブ・ミュージアム「女たちの戦争と平和資料館」編/平和文化)
  • 「『慰安婦』問題と女性の人権 未来を見すえて」(「慰安婦」問題と女性の人権を考える会編/かもがわブックレット)
  • 「沖縄のこころ―沖縄戦と私―」(大田昌秀著/岩波新書)

【道徳教育・「心のノート」について】

  • 「『心のノート』を読み解く」(小沢牧子・長谷川孝編著/かもがわ出版)
  • 「『心のノート』を考える」(三宅晶子著/岩波ブックレット)

【古事記・日本書紀・日本神話について】

  • 「古事記」(梅原猛著/学研M文庫)
  • 「古事記物語」(鈴木三重吉著/角川文庫)
  • 「地図で読む『古事記』『日本書紀』」(武光誠著/PHP文庫)
  • 「現代語訳 日本書紀」(福永武彦訳/河出文庫)
  • 「現代語訳 古事記」(福永武彦訳/河出文庫)

【天皇・天皇制・皇室について】

  • 「天皇はどこから来たか」(長部日出雄著/新潮文庫)
  • 「四代の天皇と女性たち」(小田部雄次著/文春新書)
  • 「天皇家の生活99の謎」(福知怜著/二見文庫)
  • 「古代神道と神社 天皇家の謎」(関裕二著/ワニ文庫)
  • 「大正天皇」(原武史著/朝日文庫)

【日本の近現代史について】

  • 「世界史リブレット44 日本のアジア侵略」(小林英夫著/山川出版社)
  • 「日本の植民地支配 肯定・賛美論を検証する」(水野直樹・藤永壯・駒込武編/岩波ブックレット)
  • 「もういちど読む 山川日本近代史」(鳥海靖著/山川出版社)
  • 「日本近現代史を読む」(宮地正人監修・大日方純夫・山田朗・山田敬男・吉田裕著/新日本出版社)

【皇国史観について】

  • 「皇国史観」(永原慶二著/岩波ブックレット)

【「司馬史観」について】

  • 「司馬遼太郎の歴史観 その『朝鮮観』と『明治栄光論』を問う」(中塚明著/高文研)

【国旗・国歌について】

  • 「『日の丸・君が代』と『内心の自由』」(堀尾輝久・右崎正博・山田敬男著/新日本出版社)
  • 「日の丸・君が代50問50答」(歴史教育協議会編/大月書店)
  • 「知っていますか? 君が代・日の丸一問一答」(上杉聰著/解放出版社)

【憲法について】

  • 「ビギナーズ 日本国憲法」(角川学芸出版編/角川ソフィア文庫)

【日本の神・神社・古代史について】

  • 「日本の神様と神社 神話と歴史の謎を解く」(恵美嘉樹著/講談社+α文庫)
  • 「知恵袋BOOKS 最新学説で読み解く 日本の古代史」(瀧音能之監修/宝島社)
  • 「出雲と大和―古代国家の原像をたずねて」(村井康彦著/岩波新書)

【歴史認識問題について】

  • 「『歴史認識』とは何か 対立の構図を超えて」(大沼保昭著 聞き手・江川紹子/中公新書)

・解説/歴史認識問題について、非常に分かりやすく書かれているので、ぜひ読んで欲しい。特に若い人にはおすすめしたい。

  • 「すっきり!わかる歴史認識の争点Q&A」(歴史教育者協議会編/大月書店)
  • 「これだけは知っておきたい 日本と韓国・朝鮮の歴史」(中塚明著/高文研)
  • 「日本は過去とどう向き合ってきたか 【河野・村山・宮沢】歴史三談話と靖国問題を考える」(山田朗著/高文研)

【悪魔・モンスターについて】

  • 「よくわかる『異形の神々』事典」(幻想世界を研究する会著・ブレインナビ編/廣済堂文庫)

【戦争を扱った文学】

  • 「ジョニーは戦場へ行った」(ドルトン・トランボ著・信太英男訳/角川文庫)

・解説/先ほど紹介した映画の原作だが、ラストがどことなく『超力兵団』のラストダンジョン(未来を垣間見ることが出来る場所)を思わせるところがある。

【このゲームの元ネタと思われるもの】

  • 「女王蜂」(横溝正史著/角川文庫)

・解説/金田一耕助シリーズのひとつ。絶世の美女・大道寺智子を巡る凄惨な事件に挑む。この小説の登場人物名「大道寺」、「九十九」、「風間」は、『超力兵団』の元ネタだろう。しかし、この小説の「九十九龍馬(つくもりゅうま)」は、どこかラスプーチンを思わせる。

【神道・国家神道について】

  • 「神道入門―民族伝承学から日本文化を読む」(新谷尚紀著/ちくま新書)