ろーだいありー

PS2ソフト『デビルサマナー葛葉ライドウ対超力兵団』の考察記事、ゲームプレイ記録、コレクション写真など。

シリーズ記事「『超國家機関ヤタガラス』はなぜ怖ろしいのか?」・第三回目

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(※画像はイメージです)

シリーズ 「超國家機関ヤタガラス」はなぜ怖ろしいのか?

・第三回目「『第七話・呪われた探偵』というシナリオの怖ろしさを検証する(其の弐)」

はじめに

※このブログは、『女神転生(メガテン)』ファンの個人による非営利ブログであり、発売元のゲームメーカー様とは一切関わりありません。予めご了承ください。

※この記事は2021年8月21日に加筆・訂正・修正済み。

 

このシリーズ記事は、『デビルサマナー葛葉ライドウ対超力兵団(Devil Summoner: Raidou Kuzunoha vs.the Soulless Army)』(以下『超力兵団』。「プレイステーション2(PS2)」専用ゲームソフトとして2006年に「アトラス」社より発売されたもの。現在は絶版)に登場する架空の組織「超國家機関ヤタガラス」(以下ヤタガラスを「徹底的に批判するため」と、「この『葛葉ライドウ(Raidou Kuzunoha)』シリーズ、特に『超力兵団』は、もう封印作品とすべきである」ということを訴えるために書くものである。

なぜ、このようなことを訴えるのかは、この記事を読み進めれば分かるだろう。

なおこの記事には、このゲームの「ネタバレ」も多く含む点には注意されたい。

また、このゲームをプレイされていない方には理解出来ないであろうことは、お断りしておく。

もうひとつお断りしておくが、本記事と前回までの記事で、この『超力兵団』の「設定・世界観・キャラクター描写・ストーリー」などに関する事柄はすべて、PS2のゲーム『超力兵団』及び、続編の『デビルサマナー葛葉ライドウ対アバドン王(Devil Summoner 2: Raidou Kuzunoha vs. King Abaddon)』(こちらもPS2専用ゲームソフト。2008年発売。現在は絶版)と、この二作の説明書・各種公式攻略本や、『超力兵団』の公式設定資料本のみを参考にして書いた。それ故、この二作を題材とした「メーカー公認のコミック・ノベライズ・ドラマCD」といったものは一切参照していない(私はこの類の商品は一切購入せず、閲覧・視聴もしないため)。予めご了承あれ。

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前回までのおさらい・ゲームの概要

『超力兵団』は、『女神転生(メガテン)』という、「悪魔(敵モンスター)を仲魔(味方)として戦わせたり、『悪魔合体』と呼ばれる独自のシステムを持つRPGシリーズ」をベースとした作品である。

ジャンルはRPGだが、戦闘シーンはアクション要素があるのは、他の『メガテン』には見られないものである。

対象年齢は15歳以上(廉価版は「C」区分だが、内容は同じ)。15歳未満でも購入は可能。

「暴力シーンやグロテスクな表現を含む」の注意喚起あり(主に戦闘シーンの流血描写についてのこと。苦手な方はご注意)。

1931年「架空の日本(「大日本帝国」)」を舞台とするが、年号が「大正20年」という、ありえないものになっている(現実だと「昭和6年」)。そして、シナリオの主な舞台となるのは「帝都(東京)」である。

主人公は「葛葉ライドウ」という少年。表向きは学生で、「探偵助手」もしているが、正体は「ヤタガラス配下のデビルサマナー(「悪魔召喚師」)」なのである。「ゴウト」と呼ばれる「喋る黒猫」を相棒とする。

なお、「ライドウ」とは通称で、「本名」はプレイヤー自身で入力する。

全十二話のうち、前回までは第七話まで大雑把に紹介したが、おさらいするとこんな話である。

1931年の帝都(東京)。

ライドウは、ヤタガラス配下のデビルサマナーであり、ヤタガラスから「帝都を守護する」使命を与えられているのだが、ある日「大道寺伽耶(だいどうじ・かや)」という令嬢が誘拐され、行方不明になる事件に遭遇する。

この事件を追ううち、これは「帝都の破壊を目論む勢力による事件」であることが判明する。

ライドウは、この勢力と戦うことになるのだが…。

そして、第七話では「ヤタガラスの命令で、『敵に呪いをかけられて、身動きが取れなくなった、ある重要人物』を救うために戦う」ことになるのだった…。

詳しくは前回、前々回の記事も参照のこと。

lucyukan.hatenablog.com

lucyukan.hatenablog.com

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「ヤタガラス」とは何か?

では「ヤタガラス」とは何者か? 前回と前々回も触れたが、もう一度書くと「古くから背後で日本を『不思議な力によって』守護・支配する、謎に満ちた組織」であるという。多くの「デビルサマナー」たちを配下に置いているのだとか(ちなみに「デビルサマナー(悪魔召喚師)」とは、「悪魔を仲魔として共に戦うことが出来る」職業のこと)。

しかし、あえて断言すれば、ヤタガラスのモデルは「国家神道」である。

なぜかというのは、この先で明かそう。

なお、「ヤタガラス(八咫烏)」とは本来、「神武天皇(初代天皇と言われるが、架空の人物と考えられる)を導いたとされる、伝説(神話)上の烏(三本足であるとも言われる)」のこと。

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第七話はなぜ大問題作なのか?

前回では、「第七話・呪われた探偵」というシナリオは「大問題作である」と説いたが、今回はそれをさらに掘り下げていきたい。

まず、先ほども少し触れたが、この第七話のあらすじはこうである。

「ヤタガラスの使者」ヤタガラス配下の女性。シナリオ上何度も会うことになる、ライドウの協力者)が言うには、「海軍の…、いや、日本國の未来において重要な御方」が、「敵勢力の『呪い』」にかかってしまった。

この重要人物を救うために、ライドウが「呪い」をその身に引き受け、術者を倒すようにと命じられる…。

これのどこが問題なのかは、前回も書いたように、この「重要人物」が実は「大正天皇」であること、そして「ヤタガラスの命令に逆らうことは出来ない」点である。

つまり、「天皇を救うために、命がけで戦え」と命じられる話であり、「従わない限りクリアは不可能である」、という二点が大問題なのである。

なぜそれを問題とするのかは、これから詳しく解説していこう。

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ヤタガラスの使者のセリフから読み解く、ヤタガラスの怖ろしさ・1

【「海軍の…、いや、日本國の…」というセリフ】

今回は、この第七話で聞くことが出来る「ヤタガラスの使者」のセリフを読み解きながら、「ヤタガラスのどこが怖ろしいのか」と、「第七話のどこが大問題作なのか」ということを解説していこう。

まず、このシナリオの序盤で、ヤタガラスの使者は「閣下、葛葉の者が参りました」、「ライドウ、この御方は海軍の…、いや、日本國*1の未来において、重要な御方です」と、「呪われた人物」について解説している。ちなみに、この人物はライドウの前に姿を現すことは無く、シルエットしか見えない。

前回書いたように、ヤタガラスの使者はこの人物を「海軍と、日本國の未来において重要な御方」と言っているので、彼が「大正天皇」であることは間違いない。なぜ「陛下」でないのかは気になるが、すぐに「天皇」だと分からないようにしたのか? ただし「閣下」でも間違いでは無いが(「閣下」は、「偉い軍人」に付ける敬称だから)。

だが、ひとつ引っかかることがある。「大日本帝国憲法」が敷かれた、現実の1931年当時の日本では、「天皇は日本軍(皇軍)の、陸軍と海軍の大元帥である」のだが、このゲームではなぜ「海軍だけの大元帥」になっているのか?

これは、このゲームでライドウと敵対するのが「陸軍の軍人・宗像(むなかた)」(本来は愛国心の強い軍人だが、何者かに利用され、「帝都破壊を目論む者」になった。第七話より前のシナリオで初登場する)だから、「ヤタガラスと天皇が率いているのは海軍だけである」設定にしたのでは。

しかし、もっと深読みしていくと、「天皇の戦争責任」というテーマに関わる問題なのかも…、とも思えるのである。

そもそも、1931年なのに「大正天皇が生きている(昭和天皇の時代では無い)」設定にしたこと自体、何かの意図があると考えていいかも知れない。

それは、「昭和天皇を救う」話にしてしまうと、「昭和天皇には戦争責任がある」と考える人から「後に『戦犯』とされる(裁きは受けなかったにせよ)昭和天皇を救えという話を入れるとは何事だ!」と、猛抗議が来る可能性があることを怖れたからだろうか、と推測する(あくまで憶測だが)。

しかし、大正天皇にも「第一次世界大戦」などの戦争責任は存在するだろう。どうやらこのゲーム上でも、この戦争はあったようだし(恐らく、明治時代の「日露戦争」などもあったのだろう)。

「昭和天皇ではなく、大正天皇を救う」話にしたのは、「生まれつき病弱であった大正天皇の方が、シナリオ上、都合がいいから」ということは有り得る。だが、ただそれだけが理由とは考えられないのである。

さらに、「陸軍の戦争責任は、天皇もヤタガラスも負わなくていい」ことにするつもりだったのでは…、とも思える。

しかし、そんな詭弁が通じると思ったのだろうか?

海軍にも、重大な戦争責任は存在するのに(このゲーム上の過去でも未来でも)。たとえ、海軍の軍人は「東京裁判」では死刑判決を受けなかったとしても(有罪判決を受けた「海軍軍人」は居るが、死刑は免れている)。

それから、「天皇は、陸軍か海軍のどちらかの大元帥でしかない」設定にするのであれば、「天皇は陸軍だけの大元帥」として、「ライドウは『海軍の悪い軍人』と戦う」話にしてもいいはずなのだが、なぜ「海軍のみの大元帥」の方を選んだのか? ということについても、何か裏があると思える。

恐らく、このゲームの製作者は、「日本の陸軍と海軍が戦争で何をしたか(このゲーム上ではまだ起きていない「日中戦争」や「アジア・太平洋戦争」の時なども含めて)」はよく知っているから、こういう設定にしたのだろうと思う。つまり、「『日本の陸軍が起こした戦争犯罪(特に「日中戦争」と「アジア・太平洋戦争」中のもの)』の方が、『海軍の悪事・戦争犯罪』より何十倍も悪質である」ことは知り尽くしているのだろう(「東京裁判」で死刑判決を受けたのは、「陸軍軍人と文官のみ」であることも知っているはずだ)。

知り尽くしているからこそ、よく言われる「陸軍は悪で、海軍は英雄であった」(「海軍善玉論」)という説を元にして、このゲームの設定を作ったのでは。しかしこの説も、所詮は一面的なものに過ぎない。

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ヤタガラスの使者のセリフから読み解く、ヤタガラスの怖ろしさ・2

【「あなたに否という権利はない…」のおぞましさよ!】

では次に、このゲーム上でもっとも怖ろしい「ヤタガラスの使者のセリフ」を紹介しよう。見る人によっては、かなり刺激的なものだと思うので、注意して欲しい。

さて、ヤタガラスの使者は、要約すると「この御方(天皇)は呪いにより身動きが取れなくなっている」といった説明をし、「呪いをその身に引き受け、術者を倒して欲しい」などと、ライドウに呪いを引き受けるように頼むのだが、もしこのゲームを実際にプレイする機会があるのならば、ここで必ず「いいえ」と答えてみて欲しいと思う。

その時に聞けるヤタガラスの使者のセリフを、じっくりと見てもらいたいのである。

それは…。

「ライドウ、あなたに否という権利はありません」

…これだ、これこそが、このシナリオは「ゲーム史上稀に見る大問題作」だと主張する原因なのである! このセリフは「いいえ」と答えた時しか見られないので、注意して欲しい。

これのどこが問題か。まず第一に「ここで『はい』と答えない限り、先に進むことは出来ない点(「いいえ」と答えた時は、もう一度ヤタガラスの使者に話しかけて「はい」と答えないと進めない)」。つまり、「ヤタガラスには逆らうことが出来ない」のである。

これだけでは分かりにくいので説明すると、まず重要なのは、このゲームは「天皇/天皇制/皇室」に好感を持っている人だけがプレイするものではない、ということ。

「天皇は戦犯であり、侵略戦争の象徴だ(特に昭和天皇について)」、「天皇制、皇室は廃止しよう」と主張する人であっても、もしかしたらこのゲームをプレイするかも知れない(『メガテン』ファンは幅広く存在するため)。日本の侵略戦争・植民地支配について詳しい在日韓国人や在日中国人も、プレイする可能性はある(日本のゲームが好きで未翻訳ソフトを個人的に輸入しているアジアの人、日本に来たアジア系の留学生なども含む)。

そういった人たちが、第七話で突如「天皇(ここでは「大正天皇」であるが)を救うために戦え、逆らうのは許されない(逆らうとクリアは不可能)」と言われたら「なぜ天皇を護らなければならないというのだ! 天皇は侵略と戦争の象徴なのに!」と反発するのは必須であろう。そういうことには、製作者は思い至らないのだろうか?

つまり、このゲーム自体、製作者の思惑としては「大日本帝国と軍国主義・旧日本軍が好きで、天皇が好きな『右翼っぽい人』にしかプレイして欲しくない」のかと思う。そうでなければ、「『ヤタガラスに従わない』という選択肢が存在しない」シナリオは創らないと思うのだが。

このようなゲームは、限られた人しかプレイしない「同人ゲーム」であれば、認められるのかも知れないが、誰が買うのか分からない「商業用ゲーム」でやってしまうのは(子どもでもプレイ出来る!)、非常に問題がある

まあ、「アジア・太平洋戦争などをモチーフとしたウォーシミュレーションゲーム」は、商用でも存在するが。こういったゲームは、基本的に戦争好き(ミリタリーオタク)しかプレイしないから、かまわないのかも知れないけど(こういうゲームの存在自体を否定する人も、もちろん居るだろうが)。しかしこのゲームは『メガテン』というシリーズの一部であり、決して「大日本帝国ファン、天皇・皇室ファン、軍国主義好き、軍隊好きだけがプレイするものでは無い」のだ。そこに問題があると思う。

「ヤタガラスと対立する(天皇とも対立する)話にすると、右翼から抗議される(「菊タブーに触れる」)恐れがあるから、出来なかった」可能性は十分考えられるが…。

しかし、「ヤタガラスに逆らえない」という時点で、すでにこのゲームは「思想差別、人種差別」的な要素を含んでいるのだ。本来、このような表現は「ゲーム倫理違反」なのではと思うのだが。

そしてもう一つ重要なのは、このセリフだけでも「ヤタガラスの思想とは、『国家神道』と『教育勅語』そのものである」ことが分かる点だ。

「国家神道」は、戦前・戦中の日本にあった宗教のこと(「神道」を元にしている)。簡単に言うと「天皇を神(現人神)」とするものだ。「教育勅語」(戦前・戦中の子どもたちに徹底的に教え込まれたもの)も、それに付随するものである。

この二つの「教え」を至極簡単にまとめると、こうなる。「天皇は神の子孫で、生き神様だから偉いのです。だから崇め奉りなさい。我が日本は天皇を頂く『神の国』であり、アジアでいちばん素晴らしい国です。日本国と天皇の身に何かあれば、臣民は命がけで天皇と皇室と国体(天皇が中心の国)を護りなさい」。

そう、別にヤタガラスは「天皇は神である」とはあからさまには言わないけれど、このシナリオを見るだけでも「ヤタガラスは天皇を神とし、その天皇を頂く日本はアジアの中でもいちばん素晴らしい国だと思っていて、天皇と皇室と国体を護るためなら、ライドウを含む『国民(臣民)』は犠牲にしてもいいと思っている組織」だということが、よく分かるのだ。また、「否という権利はない」とは、つまり「ライドウの人権というものを否定する」発言でもある。

こういう思想こそが「侵略戦争・植民地支配」を引き起こすのである。それなのに、ヤタガラス「日本国の未来において、天皇は重要な人物である」と主張している…。ヤタガラスの思想では「天皇を護ることが、日本を護ることである」のだろう。いかにも右翼…、いや「極右」らしい思想である。それゆえ、ヤタガラス「極右団体」であると断言する。

大昔の天皇であれば、まだ神格化されてはいないから「平和の象徴」と見なすことも出来ようが、「大日本帝国」時代の天皇は「軍の大元帥・戦争の象徴」であり、それを崇め奉るヤタガラス「戦争を『聖戦』として美化する」組織としか思えないのである。ヤタガラスは、「古代の思想」から抜け出せない体質なのだろうか。天皇を「軍の大元帥」とする軍国主義日本になっても、まだ天皇を「平和の象徴」と見なすというのか。

そしてもうひとつ、「天皇を尊いものとして崇拝する」のは、「身分差別を肯定すること」であるのも問題だ。

「大日本帝国憲法下の日本の話で、所詮ゲームなのだから、国家神道がモデルの組織を肯定的に扱ってもいいだろう」という意見もあるかも知れないが、たとえゲームであっても、このような組織を肯定的に扱うことに苦痛を感じる層も存在することには配慮すべきである。「所詮ゲームならいい」論は、若者や社会への影響を考えていない。「ゲームなら何してもいい」と言うなら、ヤタガラスを滅ぼす話でもいいはずだが。

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ヤタガラスの使者のセリフから読み解く、ヤタガラスの怖ろしさ・3

【ライドウの身を案じているように見えるが…】

最後に、無事に「術者を倒し、呪いを解いた」時の、ヤタガラスの使者のセリフも紹介しよう。

呪いを引き受けると、術者を倒しに行くことになるが(呪われている間は、一定時間ごとにダメージを受けるなど、通常とは異なる状態で進まなくてはならない)、術者である「ヒトコトヌシ」を倒すと呪いを解くことが出来る。

その直後の、ヤタガラスの使者のセリフに、このような一節がある。

「その身が無事で何よりの事」

これは、一見するとライドウの身を案じているように見える。しかし、先ほど解説した通り、ヤタガラスの思想は「天皇と皇室、及び国体だけ護れればいい」なので、これはうわべだけの発言であろう。

「否という権利はない」と言いつつ、「無事で何より」などと言うのは、本音と建前を使い分けているだけである。本当は、ヤタガラスにとっては「デビルサマナーというのは、天皇と国体を護るための使い捨ての道具」なのでは無かろうか。

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まとめ

では、今回のまとめ。

  1. このゲーム上の日本で、1931年なのに昭和天皇では無く大正天皇の時代としているのは、「第七話で、『昭和天皇を救え』といった話にしてしまうと、反天皇制の人から苦情が来る恐れがあるのでマズいと思ったから」なのでは。「病弱な大正天皇を救う話の方が都合がいい」という理由もありそうだが、それだけとは思われない。
  2. このゲーム上で、天皇を「海軍のみの大元帥」としているのは、「陸軍軍人と対立する話だから」というのもあるが、実は「陸軍の戦争責任」を、天皇とヤタガラスからは逃れさせるためか?
  3. 旧日本軍の、 陸軍は悪くて海軍は英雄だった説を元に創られたゲームと考えられるが、これはあまりにも一面的すぎるのでは無いか。現実では、海軍の悪事と戦争犯罪も多く報告されている。
  4. ヤタガラスの使者のセリフ「ライドウ、あなたに否という権利はありません」は、ライドウの人権を無視した発言であり、ひいては「天皇と国体を護るためなら、国民(臣民)の人権などどうでもいい」という、ヤタガラスの思想を表したものである。
  5. ヤタガラスの「天皇を救え」という命令に逆らえないのは、思想差別、人種差別的な要素を含んでいる。逆らえると「菊タブー」に触れるので、出来なかったのかも知れないが。
  6. ヤタガラスの思想は「国家神道」と「教育勅語」を元にしている。
  7. このゲームは、「天皇嫌いにはプレイして欲しくない」「大日本帝国、天皇が好きな人だけプレイして欲しい」という製作者の意図があるのでは。商用ゲーム(子どもでも手に取れるもの)で、さらに『メガテン』シリーズでこういった表現は問題がある。「ゲームなら何をしてもいい」わけでは無い。
  8. ヤタガラスは、「天皇は平和の象徴」と考えているのだろうが、古代ならともかく、大日本帝国憲法の敷かれた日本では間違っている。天皇は戦争と侵略の象徴である。
  9. ヤタガラスの使者のセリフ「その身が無事で何より…」はうわべだけで、ヤタガラスにとっては、デビルサマナーは「天皇を護るための使い捨ての道具」なのかも知れない。
  10. ヤタガラス極右団体であり、「天皇を神とし、天皇が起こす戦争を『聖戦』として美化する」思想を持つと考えられる。それが侵略戦争と植民地支配の原因となる。また、「身分差別思想を持つ(「天皇は尊い」と思っているため)」組織でもあろう。

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おわりに

今回は、ヤタガラスの使者のセリフを元に、この第七話及びヤタガラスの怖ろしさを検証してみた。

次回は、第七話における、もう一人の重要人物「川野定吉」(海軍軍人。一応ライドウの味方をしている)のセリフを紹介したい。この男のセリフにも、「ヤタガラスの怖ろしさ」を読み解くヒントが隠されているのだ。

では、また次回。

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参照ゲームソフト・参考文献

今回の記事で参照したゲームソフト・参考文献のリスト。なお、すでに絶版のものもあるので、ご了承ください。

【参照ゲームソフト】

  • デビルサマナー葛葉ライドウ対超力兵団(プレイステーション2/発売元・アトラス)
  • デビルサマナー葛葉ライドウ対アバドン王(プレイステーション2/発売元・アトラス)

【『超力兵団』及び続編の本】

  • デビルサマナー葛葉ライドウ対超力兵団 超公式ふぁんぶっく(ファミ通編集部責任編集/エンターブレイン)
  • デビルサマナー葛葉ライドウ対超力兵団 超公式完全本(ファミ通編集部責任編集/エンターブレイン)
  • デビルサマナー葛葉ライドウ対アバドン王 公式ガイドブック(ファミ通編集部責任編集/エンターブレイン)
  • デビルサマナー葛葉ライドウ対アバドン王 超公式完全本(ファミ通編集部責任編集/エンターブレイン)

【その他参考文献】

  • 中国侵略の証言者たち――「認罪」の記録を読む(岡部牧夫・荻野富士夫・吉田祐編/岩波新書)
  • 日本の戦争 歴史認識と戦争責任(山田朗著/新日本出版社)
  • 天皇家の密使たち(高橋紘・鈴木邦彦著/徳間文庫)
  • 天皇の戦争宝庫――知られざる皇居の靖国「御府」(井上亮著/ちくま新書)
  • 教育勅語の何が問題か(教育史学会編/岩波ブックレット)
  • 徹底検証 教育勅語と日本社会 いま、歴史から考える(岩波書店編集部編/岩波書店)
  • 国家神道と日本人(島薗進著/岩波新書)
  • 「天皇機関説」事件(山崎雅弘著/集英社新書)
  • 国家神道(村上重良著/岩波新書)
  • 日本の歴史8 大日本帝国の時代(由井正臣著/岩波ジュニア新書)
  • 日本人なら知っておきたい古代神話(武光誠著/KAWADE夢新書)
  • 南京事件(笠原十九司著/岩波新書)
  • 昭和天皇の終戦史(吉田裕著/岩波新書)
  • 天皇の祭祀(村上重良著/岩波新書)
  • 海軍日本の終戦工作――アジア太平洋戦争の再検証(纐纈厚著/中公新書)
  • …こどもがききました 日本は朝鮮になにをしたの シリーズいま伝えたい1 朝鮮侵略(映画「侵略」上映委員会編/明石書店)
  • …こどもがききました 日本は中国になにをしたの シリーズいま伝えたい2 中国侵略(映画「侵略」上映委員会編/明石書店)
  • ヤタガラスの正体 神の使い「八咫烏」に隠された古代史の真実(関裕二著/廣済堂新書)
  • 写真図説 日本の侵略(アジア民衆法廷準備会編/大月書店)
  • 昭和と日本人 失敗の本質(半藤一利著/新講社)
  • 戦う広告 雑誌広告に見るアジア太平洋戦争(若林宣著/小学館)
  • 「日本スゴイ」のディストピア 戦時下自画自賛の系譜(早川タダノリ著/青弓社)
  • 中国人の愛国心 日本人とは違う5つの思考回路(王敏著/PHP新書)
  • 「愛国」の技法 神国日本の愛のかたち(早川タダノリ著/青弓社)
  • 眠れないほど面白い「古事記」(由良弥生著/王様文庫)
  • 神国日本のトンデモ決戦生活 広告チラシや雑誌は戦争にどれだけ奉仕したか(早川タダノリ著/合同出版)
  • 日本のいちばん長い日 決定版(半藤一利著/文春文庫)

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*1:ゲーム上ではこの表記である