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『《自粛社会》をのりこえる』批評

『《自粛社会》をのりこえる 「慰安婦」写真展中止と「表現の自由」』(安世鴻・李春熙・岡本有佳編/岩波ブックレット)を読んだ感想。

 

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ニコンサロンでの日本軍「慰安婦」写真展中止事件を扱っているが、事件の詳細はここでは省く。

この本でどうも気になるのは(左派と思われる岩波書店であるから仕方ないのか)、写真展を中止したニコン側を「ネット右翼・右翼を恐れすぎるあまり過剰な自粛をして、表現の自由を守るために戦わないダメな企業」という感じで一方的に断罪したり(先日の「あいちトリエンナーレ」の事態を見るに、この本の筆者たちは右翼・ネット右翼を甘く見ていると感じる。また左翼でも何でもないニコンに対して過剰に期待しすぎているとも思った)、このような事態が起きたのは「忖度・自粛」社会のせいということにしており、ネット右翼などへの断罪が足りない点である。

私のスタンスとしては、「勝手に中止を決めたニコン側は確かに批判すべきだが、裁判の結果、結局は開催に至ったことは悪くないのだから(開催されなかったとしたら最悪だが)、一方的にニコンばかり断罪するのはおかしい。本来、徹底的に断罪されるべきは歴史修正(改竄)主義のネット右翼の方だ(ネット右翼の敵・いわゆる「ネット左翼」にも批判されるべき人間はいるが)」としておく。

「表現の自由は守られるべき」、「妨害に屈せず、表現の自由を守るために立ち上がる人は素晴らしい」、と私は思う。とはいえ「表現の自由を勝ち取るために戦うことを、すべての人に強要することは出来ない」 のは事実だし、「妨害に屈してしまう奴、表現の自由を守る戦いに参加しない奴はダメ人間だ」、「だからニコンはダメだ」、と一方的に決めつけて断罪するのは間違っている。それこそ「社会の分断」を生み出すのではないのか。「表現の自由のために戦う者はいい人」、「戦わない者は勇気の無いダメな奴」としてしまうのは、「こういう意見の者は左翼で、それ以外は右翼」と勝手に分類するのと同じことで、危険だと思う。

そういえばこの事件以降、「ニコンを使うのはダメな奴だ」というような、人を属性だけで決め付けるような発言(いわゆる「ネット左翼」か「反差別活動家」と思われる者のTwitterか何か。「不買運動」に近い)も見たような気がするが、むしろ「ニコンが好きで、健全な企業になって欲しい」と願うのならば、「ニコンが好きだから、妨害に屈せず、忖度・自粛しないでください」と要望しつつ、ニコンを使い続けるべきだと思う。不買よりもその方が正しいやり方だと私は考えている。

「自粛社会を乗り越えよう、忖度しないようにしよう」と訴えかけるのはいいことだが、すべての人にそれを強要してはならない。そうしたくても出来ない、戦えない人たちもいるのは事実なので。「『自粛・忖度してはいけない』と言う人たちがうるさいから、忖度して自粛しないでおこう」というのでは何の意味も無い。天皇が好きだからといって「天皇を崇拝しろ、敬え」と他人に押し付けてはならないが、天皇制が嫌いだからといって「天皇制反対を訴えろ、敬うな」と人に押し付けるのもダメなのだ。「原発に反対しろ、脱原発デモに参加しろ」と強要するのもいけない(その逆も)。思想は自由であるから。
なお念のために言うと、日本軍「慰安婦」問題に対しての私の基本的スタンスとしては、「旧日本軍が主体となってやったことは確かなのだから、日本政府が事実を認め、公式に謝罪し、補償し、国家として責任を取るのが正しいと思う(歴史教科書にも正しく載せるべきだろう)」、「『女性のためのアジア平和国民基金』(以前このブログでも紹介したことがある)は政府の責任逃れのための政策だと思うから、根本的に間違っていた」である。
この本の中盤以降、知識人の寄稿では「福島原発事故批判」もあるが、あくまでニコンサロン問題をメインとする本書にはふさわしくないと思う(なお、左派と脱原発派の原発・福島情報にはデマも含まれるので注意を要すると考えている。原発推進派もそうだが)。
このようなことを書くと、ニコンを断罪しないのは右翼だ、などと勝手なレッテルを貼る者も現れるのだろうが、私はあくまでも「歴史修正(改竄)主義に対抗する中道派」に過ぎない(「歴史修正(改竄)主義」に対抗するのは左翼だけではない)。ゆえ、左翼批判も右翼批判もする。

 

この事件に少し関係ある記事として、最後にこれを貼っておこう。人権団体・左翼に対する疑問も書かれていたが、私はとても共感する。

 

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